Greenジャーナルvol.27 2025年3月4号エキノドルス特集

2025年3月28日金曜日

Greenジャーナル エキノドルス

t f B! P L


金曜夜のお楽しみ、Greenジャーナルvol.27 2025年3月4号のお届けです!

Greenジャーナルは水草、熱帯植物、熱帯魚など僕が個人的に気になったモノやイベント、入荷情報などを整理して記録、告知する備忘録的なWeb連載です…が、今回は1号丸々エキノドルスの特集です!!!


日々情報が溢れて残らない時代に、本連載を通じて記録を残す事を試みています

この場が水草や生き物との出会いや楽しみ、学びが広がる一助になれば幸いです


※主にショップや企業のHP情報やツイートを中心に構成していく予定です

個人のツイートでも特に”紹介したい!”と思ったものについてはお声がけさせて頂くかもしれませんので可能であればご協力お願いしますm(__)m


コラム:水草、果てしない挑戦の数々特別版

Ⅰ.名状しがたいエキノドルスの構造について

Ech.ホレマニー'ブラッドレッド'のシュート…?(写真提供:むつをさん)

今回は誰でも見たことがある、けど誰もどう呼んでいいのかわからない構造について。


エキノドルスについて何かを書くとして、2つのネタしか思いつきませんでした。

というか個人的にエキノドルスの一番面白い点は2点に凝縮される。

もう一つのネタで書こうと思っていたのですが、本当に誰も調べていない名状しがたい構造な上に、ちょうど書き始めたところで「あれはなんだ」という質問メールが大御所からきてしまったので・・・やめておきます。将来的に研究が進んでくれればと思います。


Ech.ホレマニー'座標軸'の水中子株

さて、エキノドルスの花茎から子株ができるのを見たことがない水草好きはいないでしょう。

しかし、これを何と言っていいのかわからないのです。日本では「シュート」と呼ばれていますが、「シュート」とは茎とそれにつく葉を植物の単位としてとらえて議論を進める場合に用いられる語です。つまりロゼット状のエキノドルスの場合、極めて短い茎と葉の集合体、つまり株全体が1シュートとなります。たしかに花茎から出た子株1つはシュートと言えなくもないですが、花茎全体をシュートというのはどうも…。

そもそもこの状況について掘り下げた文献が異様に少ないです。これは非常に奇妙ですが、たとえば、カッセルマンはこれをAdventitious plantletと呼んでいます。たしかに異常な場所に出た芽ですから、この呼び名は間違ってはいないでしょう。しかしながら、暫定的な呼び名であるようには思われます。より包括的な視点で見てみるべき現象でしょう。そうすると面白くなってきます(しかし面白いことに、いい参考文献がないのです)。

エキノドルスの子株は花茎の苞の基部から生じており、通例の場合では花が咲き終わると発芽する傾向があります。しかしながら、通常では花茎先端のみ子株を生じる種もあり、そうした場合は花茎を1節ごとに切り取って水面に浮かべておくとやはり、苞の基部から子株が出てくるのを観察できます。さらに先端の子株を切り取ると、次の節の花の付け根から子株が出たりします。不思議です。

さらに、エキノドルス以外にも目を向けてみましょう。花茎から子株が生じるのは幾つかのオモダカ科に限定的ながらみられます。

エキノドルスの異常な点は空中にある花茎からも子株を盛んに吹く種があることです。

他の属でよく花茎から子株を吹くのはそれが水に沈んでしまっているときで、バルデリア、ヘランチウム、ラナリスマ、ルロニウム、ウォーターポピーでみられます。そのうち、ルロニウムとウォーターポピーではもはや花茎が本体のようになっています。オモダカも異常な熱に晒されたりすると狂ってしまい、花茎から子株が出ることが稀にあります。

ラナリスマとヘランチウムの花茎は水に沈めるとその先端からランナーが生じる場合があり、この二種の場合どうやらランナーと花茎は相同で、水中の花茎がランナーになっていると考えられるでしょう。苞の付け根にムカゴがつくマルバオモダカも同様のタイプと考えられます。この種ではムカゴばかりつける花茎と花ばかりつける花茎がありますが、花ばかりつける花茎に突然ムカゴが生じるのは毎年よく見る光景です。アギナシやウリカワに近縁なサジタリアであるシャムアギナシでは葉腋から出る棒状の花茎状の構造に多数の球茎ができ、同じような現象がみられるのは非常に示唆的です。

おそらくオモダカ科のさまざまな属にみられるランナーや球茎はどれも、エキノドルスにみられるような花茎とそこに出た子株が特殊に変形したものであると予想することができます。

単子葉植物において、花序の付け根から子株が生じるのは珍しくない現象であるように思われます。ハタベカンガレイの子株(カヤツリグサ科)、ホシクサの“直撃”(ホシクサ科、これにはProliferating headという名がある)、ノビルのムカゴ(ヒガンバナ科、球芽)、チランジア(パイナップル科)、アガベ(リュウゼツラン科)などにみられます。

これらはアポミクシスと呼ばれることがしばしばありますが、被子植物に通常用いられる狭義のアポミクシスとはまったく別のものです。狭義のアポミクシスは簡単に言えば、植物における処女懐妊のことです。身近な例でいえばセイヨウタンポポなどにみられ、受粉していないのに単為生殖により種子ができます。

それに対して花の代わりに子株ができるタイプはVegetative apomixisまたはPseudoviviparyといいます。これは単に花が子株に置換されている、と考えることができます。花を作る生長点から子株ができてしまった…という単純な見方すらできるかもしれません。しかし、ムカゴが花と同時に形成され、ムカゴが増えれば増えるほど花が減っていくようなものは真に花が子株に置換されているといえるでしょう。身近な例ではノビルがいい例です。しかしながら、エキノドルスやアガベ、チランジアなどの場合明らかに、花が咲いてから子株が生じています。そして花の数と子株の数にトレードオフはないように見えます。これはもはや、子株が花を置換しているとすらいえないのではないか、と思うほどです。


さて、Vegetative apomixisらしき現象は双子葉類でもポツポツ見られます。たとえばウォーターローズは水槽内で開花すると花茎の各節から根が出てきて、そこに小さなウォーターローズが鈴なりになって芽キャベツのようになり、実に愛らしいものです。しかしながら、ここまでみてくるとVegetative apomixisとただの脇芽との区別が怪しくなってきます。

ウォーターローズの花茎(基部に子株と発根が見られる)(写真提供:むつをさん)


むむ、腋芽か。

ここでエキノドルスの花茎を有茎草に見立ててみよう、という狂気に満ちた試みをしてみようと思います。

ウォーターポピーやルロニウムでは草体の殆どが花茎で花茎が水面を這いまわりながらヒルムシロのように生育しますから、エキノドルスをそう見たててもそこまで狂気の産物とは言えないでしょう(と言い出すこと自体が狂っています、ご注意。)

葉を全部むしって苞葉を葉に見立てると、根茎から多数分岐した茎に花が腋生し、葉腋には腋芽がついた有茎草の出来上がりです。すると先端は頂芽ということになり、それが切り取られるとまた次に先端に近い子株が出てくるのも納得がいきますし、根茎を掘り取って切っておくと子株が出てくるのと、花茎を切って浮かべておくと子株が出てくるのは同じ構造であるということになります。

物事には見方が色々あるので、見慣れたものも不思議に思って観察すると楽しいです。


(写真提供:むつをさん)

(写真提供:むつをさん)


著者プロフィール


404

今まさに失われつつある水草のある景色を求め、日夜フィールドを彷徨い記録している

"いつまでもあると思っていた。
ようやく手が届く、そう思ったとき、もう何もなかった。
空虚と無念と後悔は、記憶と合して憧憬を生む。その先が過去なのか、未来なのかは、もはや朧げで。
ただ私を引き込んでいく。もっと知れと。

ここを翌年訪れた時、もう水草はなかった。しかしいまでも夢に出てくる。"



コラム:特別寄稿1

Ⅱ.エキノドルス Pellucid markingsの観察結果


1.はじめに

国内にエキノドルス熱があったのは1990年代~2000年代でしょうか。

私はその当時、熱帯魚や他の水草に目を向けており、恥ずかしながらエキノドルスはアマゾンソード等メジャーなものしか知りませんでした。

その当時を「生きていない」私には、国内におけるエキノドルス史を語ることはできません。

ただ、先人が残した記録を基に、手持ちの株を観察し、特徴を示すことはできます。

少しでもエキノドルスの魅力や面白さを伝えるための一助となればと思い、今回はE.ホレマニー(Echinodorus horemani Rataj)とE.ウルグアイエンシス(Echinodorus uruguayensis)の相違点と言われているPellucid markingsに焦点を当てた観察結果等について述べさせていただきます。


2.ホレマニーとウルグアイエンシスの識別

「ホレマニーとウルグアイエンシスの差って何だろう。」

エキノドルスを育てている方であれば誰もが疑問に持つのではないかと思います。

育成環境により草姿が変わることもあり、私自身、ホレマニーとウルグアイエンシスの識別点を考えた時、明確な特徴を挙げることはできませんでした。

そんな時、4.04様が管理なさっている、はてなブログ「水草オタクの水草がたり.」の「エキノドルス①ホレマニーとは一体何なのか」を拝見し、Pellucid markingsなるものの存在を知りました。

詳しくは上記記事を見ていただきたいのですが、1967年8月11日にブラジル,パラナ州のポンタ・グロッサで採取されたホレマニーについて、チェコの植物学者であるKarel Rataj(以下、ラタイ)博士が「ウルグアイエンシスとは沈水葉の緑色の違いとPellucid markings(葉身の透明な線)の欠如によって区別される」 (9-2参照)旨を発表しており、Pellucid markingsなるものの有無により、ホレマニーとウルグアイエンシスを区別できる可能性があることが分かりました。


3.Pellucid markingsとは

 ラタイ氏によるとPellucid markingsとは、葉脈間にある光を透過する部位のことであり、その形状は、線状、点状など種によって異なる上、Pellucid markingsを持つもの、持たないものに分かれるとのことです。

 植物学者Lehtonen氏の論文内の画像から、エキノドルスのうちPellucid markingsを持つもの持たないものを引用します。おそらく水上葉と思われますが、左上の葉以外の白く光を透過した部分が、Pellucid markingsです。


Pellucid markingsの有無 (9-⑶参照)



 

なお、ラタイ氏はE.オシリス(Echinodorus osiris Rataj)について、「水上葉にも水中葉にも明瞭なPellucid markings(line)が入る」とし、一方でポンタグロッサのホレマニーについて、「ウルグアイエンシスと異なり、水上葉にPellucid markingsがない 」と記述しています。(9-⑵参照)

  そこで、オシリスとウルグアイエンシスを観察し、Pellucid markingsがどのような形質であるのか、実際に水上葉及び水中葉を確認したいところですが、手元に水上葉がないことから、両種の水中葉のみ観察しました。 

   



Pellucid markingsと思われる部分に矢印を付けました。

 まず、オシリスについては、縦の葉脈間にスポット状の組織が認められ、ウルグアイエンシスについては、縦の葉脈間に斜めに走る組織が認められました。不明瞭ではありますが、これらがPellucid markings(line、spot)であると考えられることから、観察結果を基準に、以下に手持ちのウルグアイエンシスやホレマニーの水上葉及び水中葉のPellucid markingsを観察していきます。


4.Pellucid markingsの観察方法

 水上葉と水中葉をそれぞれ展開するウルグアイエンシス、ホレマニー6種のPellucid markingsについて、顕微鏡(×60倍)を用いて観察します。画像の撮影については、スマートフォンのカメラ機能を使用し、固定器具でスマートフォンを固定して行いました。 


5-1.観察対象    

 ⑴ ホレマニーグリーン “レッドエッジ”

  ア 水中葉

    深緑色でブロードリーフ。新芽が赤く縁取られる。    

 


  イ 水上葉(左:夏期 右:現在) 

    葉は深緑色で、丸みのある楕円形に展開。

 



⑵  AZ1110-9 collected 20/11/2010

   Ech.uruguayensis[Type horemanii] from San Pedro

  ア 水中葉

    深緑色でナローリーフ。葉長30㎝程で大型化しない。

 


   イ 水上葉(左:夏期 右:現在)

     葉は黄緑色で、高光量下では楕円形に展開。夏期は赤色の縁取りが見られた。

 



⑶  AZ1112-9 赤ウルグ羊

  ア 水中葉

    葉色は黄緑色でストレート、草姿はウルグアイエンシス。

 


 

  イ 水上葉(現在) 

    黄緑色で、小さく細長い葉を展開。


 ⑷ AZ便タイプホレマニー

  ア 水中葉

    深緑色のホレマニー。-9に似るが葉幅が出る上、葉長も50センチ程になる。

 


 

  イ 水上葉(夏期)

    黄緑色で細い葉を展開。葉に赤色の縁取りなし。

 



⑸ ホレマニーレッドウルグアイ

  ア 水中葉

    新芽の葉脈全体に薄い赤が載る。ルーツさんの「ホレマニーグリーンのレッド

   タイプ」という説明が頷ける個性的なホレマニー。

 



  イ 水上葉(現在)

    レッドエッジと同様に深緑色で丸みのある楕円形。葉が赤く縁取られる。

    葉長3センチ程度ながら、シュートを出し始めた。             

 


 

 ⑹ ホレマニーオレンジ

  ア 水中葉

    成長と共に葉色が赤茶色からオリーブカラーに変わるホレマニー。

    千葉県にあったワールドフィッシュさん由来の株。

 


  イ 水上葉(左:夏期 右:現在)

    葉脈が赤く色づく。現在は低温や低光量の影響で半水上葉と言えるような、薄く

   ワインレッドの葉を展開している。

 



5-2.観察状況

 ⑴ ホレマニーグリーン "レッドエッジ"

   水上葉:Pellucid markings(line)あり

   水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 


 

 ⑵ AZ1110-9 collected 20/11/2010

   Ech.uruguayensis[Type horemanii] from San Pedro

   水上葉:Pellucid markings (line)あり

   水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 


 

⑶  AZ1112-9 赤ウルグ羊

   水上葉:Pellucid markings (line)あり

   水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 



⑷ AZ便タイプホレマニー

  水上葉:Pellucid markings (line)あり

  水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 



⑸ ホレマニーレッドウルグアイ

   水上葉:Pellucid markings (line)あり

   水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 


 

⑹ ホレマニーオレンジ

   水上葉:Pellucid markings (line)あり

   水中葉:不明瞭ながらlineありと思料

 



6.観察結果等

 以上6種の水上葉及び水中葉を観察したところ、全ての水上葉にPellucid markingsが認められた。一方で水中葉のPellucid markingsは非常に見づらく不明瞭であり、「あり」と思料されたものの、有無について断言できる状況ではありませんでした。
 

余談ですが、ベルリンから輸入されたと言われている、いわゆる'座標軸'については、ポンタグロッサのホレマニーである可能性があると言われています。
 仮に同一種であるならば、水上葉、水中葉共にPellucid markingsを欠いているはずであり、観察しない手はないのですが、手元にある’座標軸’は水中葉のみであり、水上葉の観察はできませんでした。

 参考までに、’座標軸’の水中葉を観察したところ、非常に不明瞭ながら、Pellucid markingsがあるようにも見えます。





果たしてこれがPellucid markingsと言えるのか?単なる細脈なのか?


7.まとめ

 以上、6種の水上葉及び水中葉のPellucid markingsの有無について観察した結果、水中葉のPellucid markingsは非常に不明瞭であり、「あり」と断言できる状況ではなかったものの、水上葉にはPellucid markingsが認められたことから、ラタイ氏の基準に照らし合わせれば、前記6種は全て「ホレマニーに非ず」ということになります。

 私見として、ホレマニーとウルグアイエンシスについてPellucid markingsの有無という観点から線引きできるかと言えば、それは違うのではないかと感じています。

 そもそも、ポンタグロッサのホレマニーのPellucid markingsについて、自生場所等環境の差により発現しないということはないのか、葉の新芽と古葉など成長ステージにより発現や見え方に差はないのか、当時観察した標本株数は、個体差を排除できるだけの数だったのか、Pellucid markingsが存在するものの、不明瞭なだけだったのではないか等疑問が残ります。

 カッセルマン博士がホレマニーをウルグアイエンシスのシノニム(※現在ホレマニーはウルグアイエンシスのシノニムとされており、Echinodorus uruguayensis var. minorという学名が当てられています)と位置付けた根拠や背景はわかりませんが、シノニムと定めた以上、カッセルマンはホレマニーとウルグアイエンシス間のPellucid markingsの有無という形質の差について重要視しなかったのだと思います。

 いずれにせよ、Pellucid markingsが存在しないホレマニーが存在するのであれば観察してそれを確かめたいものです。今年は’座標軸’を水上化させ、改めて水上葉、水中葉を観察してみたいと思います。


8.あとがき 

 近頃、SNS上にエキノドルス関連の投稿が目立つようになり、エキノドルスに興味を持つ方が少しずつ増えてきたように感じます。

60センチ以上の水槽が敬遠され、小型水槽が一般的になった現代。大型化するエキノドルスに陽が当たることはないかもしれないと思っていたので、非常に嬉しいことです。

 エキノドルスの葉脈や光沢のある葉の質感、ダイナミックな草姿など、エキノドルスには唯一無二の魅力があります。1株あれば何時間でも眺めていられる水草、それがエキノドルスだと思っています。

 過去のようなブームにはならないまでも、エキノドルスを愛でる方が増えるようマイペースながらも情報発信できればと思っています。

 蓋を開ければ大した内容ではありませんでしたが、今回の投稿がエキノドルスに興味を持つきっかけの一助になればありがたいです。


9.参考文献

 ⑴ 4.04.”「エキノドルス①ホレマニーとはいったい何なのか」“. 水草オタクの水草がたり.2022-08-18. https://aquaticplants-detective.hatenablog.com/entry/2022/08/18/111001,(参照2025-03-20)

 ⑵ Karel Rataj.Alismataceae of Brazil,1978,25p 

 ⑶   Samuli Lehtonen. An integrative approach to species delimitation in Echinodorus   (Alismataceae) and the description of two new species,2008 


著者プロフィール


巨大な水槽で存分に巨大なエキノドルスを育成するエキノドルス好き
原種系のみならず改良品種にも造詣が深く、また無類の卵胎生メダカファンでもある

"大好きなエキノドルス、エンドラーズ、ワイルドフォームグッピーを日々愛でています。
家族に気づかれないよう、しれっとエキノ鉢を増やしています。"




コラム:特別寄稿2

Ⅲ.異端にして真なるエキノドルス、Echinodorus berteroiについての所感とその育成について


異端のエキノドルス


 皆さんは異端のエキノドルスと聞いてどんな種類を思い浮かべるでしょうか?


水中葉なのにやたらに硬いサターン?

それとも深緑系代表で独特の透明感が魅力のホレマニー?


自分にとっての異端のエキノドルスはベルテロイです。


Echinodorus berteroi(写真提供:ダンプティさん)


一言でいうならば、それは異端にして真なるEchinodorusといえる存在。

では、エキノドルス・ベルテロイがどんな草なのかについて把握している範囲でご紹介させていただきます。

エキノドルス・ベルテロイ(Echinodorus berteroi)は、新緑系とはまた違う透明感のある黄緑色をした沈水葉が特徴の水草で、古くからセロファンプラントの別名で呼ばれてきました。

原産地は北米から南米大陸の西側でも確認されているようで、分布域は広い種類であるといえます。

エキノドルスの仲間は、その多くが南米大陸に分布しており、北米大陸のメキシコとフロリダ半島より北の地域でベルテロイ以外にはコーディフォリウスなどの広域分布種が数種知られている程度です。

そのため、ベルテロイは北米産エキノドルスの代表種として扱われることが多く見られます。

南米産水草のイメージが強いエキノドルスの仲間では、明確に北米まで産するといえる種類は他に少なく、黄緑色のエキノドルスとしてはかなり透明感の強い葉も独特です。

 ラッフルソードことマヨール(Ech.major)も透明感のある葉で実に美しいですが、ベルテロイはさらに上をいく透明感を持っており、セロファンプラントと呼ばれるのも納得の質感を持っています。

どちらかというとオモダカ科の水草というよりは、トチカガミ科のミズオオバコ(Ottelia japonica)のような雰囲気で、その草姿は他のエキノドルスとは一線を画す雰囲気を纏っていると言っても過言ではないかもしれません。

ベルテロイが沈水葉を広げた姿は息を呑むほどの美しさを持っている、と言っても過言ではないと個人的には思っています。

その草姿と分布域だけ見てもエキノドルスの仲間としてはかなり異端な水草だと思っていました。

Aquariusという属が登場するまでは。


現在唯一のEchinodorus

 

 エキノドルスが好きな方であれば周知のことではあるかと思いますが、近年Echinodorus属は大幅に分類が見直されました。

かつてエキノドルスと呼ばれていた草は、そのほとんどが新設されたAquarius属に移され、なんとEchinodorus属に唯一残されたのがこのベルテロイなのです。

つまりエキノドルスとして異端的な要素が多いベルテロイが、現在では真のエキノドルスと呼べる存在になってしまったというわけです。


ゆえに、異端にして真なるエキノドルス。

それがベルテロイ。


育成について


ここまではベルテロイがどんな存在なのかについて簡単に触れてきました。

ここからはその育成について触れます。


現在進行系で育てているわけではなく、また過去の記憶を引き出しながらの話となります。

あくまで一個人の主観的な情報ではありますが、これからベルテロイを入手できた方の参考になれば幸いです。


まず、ベルテロイは一般的な"エキノドルス"のイメージで育成に挑むと失敗する可能性があります。

エキノドルスと聞いて思い浮かべる育成方法は、いわゆるアマゾンソードを代表とする南米産の黄緑色タイプと、ホレマニーやオパクスなどを含む深緑系を思い浮かべる方が多いかと思います。

ですが、ベルテロイはその両方とも違う育成感覚が必要になります。


例えるならば一般的なイメージとしてのエキノドルスの育成ではなく、オテリア(ミズオオバコの仲間)の育成が非常に近いという印象があります。

旧エキノドルスはCO2添加がなくてもそれなりに育てることができる種類が多いですが、ベルテロイは溶存CO2の要求量が高いのか、CO2切れを起こすとすぐに葉が衰退していきます。

具体的にはCO2添加のない環境にしばらく置くと、葉に穴が空いたり薄くなり徐々に枯れていきます。


このあたりの挙動はオテリアに非常に近いものに感じられ、実際にベルテロイを育成していた当時はアフリカンオテリアが同じ水槽に入っていました。


 結論から言えば、アフリカンオテリアを上手く育てられる方であれば大きな苦労なく育てられるかと思います。

光合成に充分な明るい光とCO2、そして低床からの肥料分供給ができあがっていれば美しい水中葉を展開してくれます。


水質に関しては、それほどうるさくはありません。

当時の水槽ではpH/KHマイナスも使わず、関東における平均的な水質の水道水をカーボンフィルターに通して水槽に入れていましたが、それで充分に育っていました。

ただ、極端な高硬度では水中の遊離炭酸が減るため、良くない影響が現れる可能性はあります。

水道水の総硬度が高くベルテロイの成長が鈍るようであれば、一般的な水草が好む適度にKHがある程度の水質に調整することをオススメします。

環境が適合し状態良く育てば、オテリアの質感を持ったウルグアイエンシスに近い形状の細長い水中葉をどんどん出してくれるようになります。

そしてウルグアイエンシスに近い形状、というのは単純に形だけではなく、サイズ感もほぼ同等です。

水中葉の長さは軽く45cmを超えます。

60×45cm水槽の右サイドに植えた株の葉先が、水槽の左端に届くくらいの長さにはなります。

大きく育てば株の根元も葉柄だけで人の拳大よりやや小さいくらいの太さにもなるので、育成にあたっては最低限高さ45cm以上ある水槽が望ましいかと思います。


 ベルテロイ独特の美しい草姿を存分に楽しむには90cm水槽ハイタイプ(高さ60cm)が用意できれば理想的です。


水上化について

 

 ベルテロイの水上化に関しては情報が不足気味で、確実にそのスイッチといえる条件は見いだせていません。

水中葉が水面に届いてすぐに水上化しはじめるわけではなく、葉が水面を覆うほどになっても水上葉をまったく出さないこともあります。

我が家でベルテロイが水上化する傾向がよく見られたのは、夏場になり水温が上昇してきた時期だったと記憶しています。

これは今考えると、水温の変化による溶存酸素量などの条件がスイッチになっていた可能性もあるのかもしれません。

一方で海外のデータベースでは「日照時間が長くなる(12時間以上)と水上化しやすくなる」という情報も見られます。

もし日照時間がスイッチになっているのであれば、乾季と雨季の変化というよりは「水位が低下する夏季のある環境」へ適応した形質なのかもしれません。

 ベルテロイの水上化の過程は非常に興味深く、旧エキノの面々にはあまり見られない水中葉と水上葉の中間のような形態を経ます。

個人的に旧Echinodorus属のなかでベルテロイが異端な存在に感じられた理由のひとつが、この中間形態の存在です。

中間形態はウルグアイエンシスやマヨールのような細長い水中葉ではなく、葉柄と葉幅の差が顕著なスプーン形…というよりはハート形に近い葉をしています。


この形態になると浮葉を出し始める可能性が高くなり、やがて水面を突き抜けた抽水形となった葉を展開するようになります。


 現地の自生画像を見ると、完全に水上化した姿では地面が湿った程度の湿地でも平気なようで、なかには地表がカラカラに乾燥していても平然としている姿のものもあり驚かされます。

オテリアのような水中への依存度が高いような姿を持ち、水槽内ではある程度の気難しさを感じさせる一方で、スムーズに水上化へ移行できればかなり強健なのかもしれません。

この幅広い形態の変化を見ると、ベルテロイが南北アメリカ大陸に広く分布を拡大できたことに頷けてしまいます。


 近年ではめっきり販売されている姿を見かけなくなってしまったベルテロイですが、ロストさせずに維持し続けるには水上化させることが望ましいのかもしれません。

自分自身で確かめてみたいところではありますが、運良くベルテロイを入手できた方は増殖を視野にいれるのであれば、一度水上化させてみることも選択肢のひとつとして考えてみてもよいかと思います。


おわりに

 さて、ベルテロイについてかなり勢いに任せるまま書き連ねましたが、読んでくれた方が少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

自分がベルテロイを育てていた当時は深緑系エキノブームも後期といったあたりでしたが、その時点でベルテロイは古くから知られていたクラシカルでマイナーなエキノドルスといった立ち位置だったかと記憶しています。

当時のエキノドルスのカテゴリーとしても相当変な位置にいた草という認識ですが、ベルテロイの話をしたときに「きれいだし、おもしろくて良い草だよね」と言ってくれる人が非常に少なかったことに内心不満を持っていた憶えがあります。

そんな経験もあったことから、今ベルテロイの話を出して何名かの方から良い反応を頂ける状況になったのは本当に嬉しい限りです。


今回greenさんにご指名いただけたのも光栄の極みです。

ありがとうございます。


ベルテロイについてもっと造詣が深い方は必ず何処かにいるはずなので、自分ごときがベラベラと語るのは烏滸がましいような気持ちも正直なところあります。

それでも自分の好きな草について語れるというのは本当に嬉しいものですね。


ただただ言いたいのは、ベルテロイはきれいで、おもしろくて、とても良い草ですということ。


願わくば再度この手に迎えることができるのであれば、今度こそロストさせずに維持し続けたい…自分にとってはそんな水草のひとつなのです。


唯一無二の優美で繊細な草姿(写真提供:ダンプティさん)



著者プロフィール


まだ見ぬ水草を求め各地の湿地を彷徨うフィールドワーク系水草マニア

マリンアクアリウムの経験に根ざした水槽管理について深い知識を持つ
その博覧強記ぶりは誰もが知るところであるが、水草を育てることにも情熱を注ぐ

「フィールドの水草もアクアリウムの水草もまとめて好きな、ただの水草好き。」



コラム:特別寄稿3

Ⅳ.2022年~23年入荷のスリランカ便エキノドルスの屋外育成とその感想

2022年・2023年に国内入荷したスリランカ便からいくつかピックアップしたものをご紹介します。屋外で大きく育ててみたかったので、ほぼほぼ水上育成したものをご紹介です。


2022年入荷

Ech.'レッドアロー'


気持ち細葉で葉模様のある赤系エキノ。
アブラムシの襲来でロストしてしまいました……。

Ech.デクンベンス

最近だとアクアフルールから定期的に来ていますが、当時の入荷頻度は今よりは少なかったのでスリランカ便のものを入手。


1ポットに2株入っていて、しばらく育てると葉の形状・葉脈の入り具合に違いが出てきました。

幼株、水中だとデクンベンスの姿形でその範疇に収まるのですが、水上は全くの別種に見えます。

個人的に「細い方」と「太い方」で区別しています。



Ech.デクンベンス(細い方)

こちらは写真などで見るEch.デクンベンスらしい雰囲気。葉が上方向に反り立つように展開しています。


Ech.デクンベンス(太い方)

細い方を見た後だと、葉の展開は似ている気がしますが、姿形は全然違います。

デクンベンスは横方向にシュートを伸ばす特性があり、細い方も太い方も同じ横方向。株の充実具合か変異なのか、よくわかりません…が面白い!

Ech.コーディフォリウス’マーブルクィーン’


真夏の日光下だと斑が黄色っぽくなります。

マーブルクイーンには複数系統存在するという話もあるようです。

個人的にはスリランカ便のものは水中でも斑は残りやすい印象です。


2023年入荷

Ech.'ハービッヒ マーブル'

マーブル、という名称にピンときた方は斑入り好きじゃないかと思います。笑 

斑入りのエキノといえば先述のマーブルクイーンがありますが、こっちは斑点模様と斑が交じる、今までありそうで無かったエキノ。

育て初めの頃は無地の葉が続いて先祖返りしたかと不安でしたが、株が生長して葉が大きくなると葉模様、斑がしっかりと出るようになりました。

株の成長に伴い斑が入り出す


 
赤斑と白斑が交じる特徴的な表現

上:E.'マーブルクィーン'、下:E.'ハービッヒマーブル'

22年のマーブルクィーンと、23年のハービッヒマーブルは一見よく似た種ですが、マーブルクィーンは大きな葉でも安定して斑が入る一方で、ハービッヒマーブルは褐色の葉模様と斑の混じり具合が多くなるほど奇形の葉になる傾向があります。


Ech.'ディープパープル'


同名の種類は無地だった記憶ですが、スリランカ便のものは葉模様ありでした

'ディープパープル'の本来の表現とは異なりますが、入手した名称、入荷便、入荷年を押さえておけば、後年に答え合わせが出来るはずなので記録していきます

屋内育成時は黄色味の強い葉で、少し変わってました。今考えるとその時の照明や環境によるものだったのかもしれません。

屋外に出して、徐々に慣らし中

屋外で大きく育った様子



Ech.スバラトゥス

スバラトゥス自体、昔は流通してたみたいですが最近は見かけることが無かった種類。

スリランカ便で来てたので入手してみました。

デクンベンスとは近しいらしく、先に紹介した太い方と雰囲気は少し似ているような気がしました。


入手したての頃はとても小さい株で、ロストしないかヒヤヒヤしながらの管理でした。


室内育成の様子

NVボックスに腰水、アマテラス照射ですくすくと育っていました。


外に慣らし中

屋外に出して数ヶ月


巨大化してワイルドな雰囲気に


ということで問屋の変わり便の一つでもあるスリランカ便のエキノドルスを一部紹介してみました。

スリランカ便のエキノを入手して思ったのが、改良エキノの流通にも共通していることなのかもですが、ほんの1〜2年前に入荷したエキノでもあっさりと流通がストップしてしまうのを実感しています。

今後も楽しみたい人がより楽しめるよう、昔の品種も今ある品種も可能な限りは残せていけるといいなと感じています。


ぐりか



著者プロフィール




離島にて水草を維持し、育てる異色の水草愛好家

水上葉での管理を得意にしており、育成中に現れる面白い形質を選抜したりして楽しんでいる

名前だけ同じでもいつの間にか中身が入れ替わっている水草が増えつつある昨今、彼の活動はますます価値があるといえるだろう




コラム:特別寄稿4

Ⅴ.2008年南米旅行記 魚とエキノと怪人達との思い出



このコラムではエキノドルスだけではなく、是非とも現地の環境も知って頂きたいと思い、旅の行程も記した旅行記として執筆しました。

2008年10月の1ヶ月間、私は当時の時点ですでに10年以上の付き合いになる故松坂實氏、故グランデ・オガワ氏(故小川芳男氏)と共に南米ペルーを拠点とし、釣りをしたり熱帯魚を採集したり化石を発掘してみたりと遊び倒していました。

まずはペルーのリマから空路でアマゾンの玄関口であるプエルト・マルドナドへ。ネイチャーツアーも盛んで外国人観光客も多く、土産物屋も立ち並び小さいながらも活気のある町。
もちろん、我々は観光ではなく魚が目的。松坂氏が「以前、黄金色のスンガロ(ジャウー)を市場で見たから釣りたい」というコトで訪れた次第。
私は1997年にNHKのBSで放映された松坂氏がジャウーを狙うドキュメンタリーでも少しばかりお手伝いをしましたし、あわよくば自分が釣ってやろうかなくらいの気分で同行。


グランデ・オガワ氏は女の子を見ればすぐにちょっかいを出す。もはや完全にブラジレイロ。



情報を仕入れに市場へ行くと、確かに黄金色のスンガロが……!
遺伝的なものではないのは承知だが、どうやら出現率が高いらしい。




とりあえず、行き当たりばったりで翌日からペルーの国道30Cを北上し、ブラジル、ボリビアとの三国国境を目指し出発。
道は舗装路ではなく完全なダートで、なかなかな悪路。これでも爆睡できるくらいの胆力があれば、海外遠征適性は◎です。





途中、川があればカヌーを持っている漁師に交渉し、釣りと投網で採集。
獲物は晩ごはんのおかずにするなりなんなりOK!もちろん、バイト代も支払うからとお願い。


















投網では、イエローピラニアにカラックス、フィラメントが凄すぎなロリカリアにヒポプレコ。おかずになりそうなクリマタも。

釣りは一朝一夕では成果は出ませんね…

川岸で育っていた野生のスイカをゲットして食べたりなんてのも、現地ならでは。




小さな流れを見つければ、車を停車しガサガサしたり。大人の力を使いつつも、やっているコトといえば子供の頃と何も変わらず……
それでも、様々な魚の姿を見られる幸せ。
採集直後のクリスタルレインボーテトラとCo.アエネウスの美しさといったらもう……!




定番のカラポナイフだけでなく、ドワーフパイクまで。



ちょっとルアーをキャストすると、これまた定番のタライーラ。これはこれで楽しい。


スンガロの成果が出ないままブラジルへ越境。国境でブーン。


アシス・ブラジルの町で1泊。近くを流れる川はリオ・アクレ。さらにそこからボリビア側へ越境。南東へ直走る。
Google Earthをチェックしてもらえればわかりますが、街道沿いは殆ど人が住んでおらず、現在でも本当に熱帯雨林しかありません。






しばらく走ると、現地の方々が使用している洗濯場を発見。

水道が無くとも川で食器を洗ったり洗濯をしたり、風呂の代わりにするのは当たり前。
コリドラスマニアの方ならピンとくると思いますが、洗濯場は基本的に砂地で流れが緩やかで浅く、コリドラスとのエンカウント率が高め。超1級ポイント。
これを逃す手はないと投網を手に取り……岸際を確認すると立派なエキノドルスが!




すぐにデジカメに持ち替え撮影。が、大きな株は撮影前に松坂氏に引っこ抜かれてしまい……ナマズが大好き、水草にはあまり興味が無いハズなのにあまりに立派で、さすがに松坂氏も反応したようで
















私はグランデ・オガワ氏とエキノドルスを観察。シュートもあり花も咲き、種子まである。
水中葉の形と成長具合で「別種なのでは?」くらいの違いがあるのも面白い。
水中葉は赤みを帯び、細葉系から幅広の葉へと変貌。

気中葉は丸みを帯びつつも成長すると先が尖る


立派な株は、もはやほうれん草……!


そもそもの私のエキノドルスとの出逢いは、高校生の頃にルームメイト901という小さなオールインワン水槽に植えた鉛巻きのアマゾンソードから。

ヘッド&テールライトテトラとブラックファントムテトラを泳がせていた小さな水槽で、いつの間にか葉数を増やし立派に育ったアマゾンソードに魅了されたのが始まり。
ですので、この大株を見た時の感動はひとしお。

ちなみに、好きなだけであって詳しくはありません。
写真で判断出来る有識者の方の見解をお待ちしております!

折角のボリビア産エキノドルス、どうにかして持ち帰りたいところ。
しかし、私はこの後に1人別行動でマチュピチュへ行ってから再合流の予定。
持ち出しの手続きも面倒だからと、エキノドルスたちは元の場所へ植えて戻しました。







ひとしきりエキノドルスで盛り上がってから、投網を投げると予想通りコリドラスが!
このコリドラスは「センム」と呼ばれて流通しているものですね。

松坂氏の義弟でありアグアプロダクションの専務の「センム」から名付けられた魚。
これには松坂氏もニッコリ。

私は社員ではありませんでしたが、大変お世話になりました。





他にはキーホールシクリッドにジュルパリ。ジュルパリはペアで網に入りました。
これもまた現地だからこその美しさ。

ここでわかるのが、流れはあれどもジュルパリとコリドラスが立派に棲息可能な場所であるというコト。

粘土質の上に上流であるアンデス山脈の石英の砂が流れ込み覆っているからこそ、砂を喰む魚の楽園に。

粘土質の上の砂地であるからこその「底物魚」のエサも豊富なのだと。

そして、それを支える養分の供給が膨大だから、この場所、環境でのエキノドルスが立派であるという。

木を見て森を見ずではありませんが、現地で水に入り五感で感じてこそわかるものは大きいのです。
少しでも皆さんにも感じて頂ければ幸いです。





他には、シルバーダラーにトーピードパイクといったカラシンも。

キャッチ&リリースでも楽しすぎで大満足。

むしろ、これを水槽でどうこうしようとする方が烏滸がましいのでは……なんて考えてしまったり。

エキノドルスの楽園を後にし、もう少し先へ。

もう少し広く大きめで良さげな洗濯場があったので、ルアーをキャスト。何度もバイトはあれども乗らず。
そこで投網を投げると……



ドラード!アマゾンのドラード!

初めて見るアイシャドードラード。ヒラリー種。
これまた感動……これだから海外遠征はやめられない。






さらに先にある小川でガサガサすると……この場所的に……レガニ系のアピストといえば……グアジャラ……?というオマケが。





ただ、いつまでも手付かずのままであってほしいと思うのは、外部の人間の勝手なエゴ……
現地に住んでいれば、やはり便利に暮らしたいと思うハズ。

最低限の配慮はされていても、刻一刻と失われていくモノも多く。

情熱があるなら、ぜひともお早めに……行きたい場所が失われる、その前に。

そして、身近な自然も同じ状況なのをお忘れなく。
私達が甘受しているモノは、どれだけ多くのモノの上にあるのかを少しでも頭の片隅に置いて楽しんでもらえたら嬉しく思います。

長文駄文、失礼致しました。

CaProjeto




著者プロフィール


CaProjeto


10代の頃から南米アマゾンを始め世界中で釣りをしているアングラー。師匠は故グランデ・オガワ氏。いまは東京湾メインにキャッチ&イート。大きなマコガレイを釣って握りにして食べたい。
最近はもっぱらワイルドベタの人として認知されているっぽい……



特集:私の好きなエキノドルス

今回は皆さんのお気に入りのエキノドルスについてお写真と一口コメントを頂戴しました!

あえて種類や系統ごとに整理したりせず、原稿を頂戴した順番で記事を並べて混沌を楽しんで頂く趣向にしております

懐深いエキノドルスの楽しみ方や魅力、それを育てる人それぞれの価値観の多様さを感じていただければと思います!


Nr.1 お餅さん:Echinodorus“Parviflorus”


パルビフロルスの名前でアクアフルールが生産していたものだが、実際にはパリフォリウスと思われる。
名前は紛らわしいが魅力的なエキノドルスで、シャープな水中葉はもちろん、写真のようにある程度成長すると水面を突きぬけ、とても野性味のある情景を演出してくれる。
照明を吊り下げたり、蓋を載せられないため飛び出さない魚を選ぶ必要があったりとやや育成のハードルはあるが、本種や近似種は様々な名前で出回っており目にする機会も多く比較的挑戦しやすいと思う。
流行りのレイアウトとはベクトルの違う水草そのものの伊吹を感じられる他、自然感がグッと出るので現地をイメージした環境作りがしたい人にもオススメ。
そこにしっかりと飼いこんだカラシンやシクリッドを泳がせ、現地に思いを馳せる、なんていうのも楽しいのではないだろうか




Nr.2 アジさん:Echinodorus uruguayensis?



当店でオープン当初から維持しているウルグアイエンシスです

ウルグアイエンシスとして入荷しておりますが、東南アジアのファームから来るウルグアイエンシスとは入荷当初から少し違う気がしており、通常のものよりホレマニー寄りな気がします。

入荷直後は水上葉で少し葉っぱが青黒かったのを覚えております。おそらく台湾便で入荷した物だったと思います。

(葉色が少し濃く、いつもお客様からAZUL Aquariumさんのモンテカルロと間違われます(笑)

AquaFocus(大阪堺市)の店舗に行けばこのエキノが見られるそうです!見てみたい!


Nr.3 monoさん:Echinodorus uruguayensis 'Classic Broad'



思い入れのあるエキノといえばウルグアイエンシスですかね。

Amazonの情景に思いを馳せてRootsさんから購入したウルグアイエンシス・クラッシックブロードをメインにエキノ中心に作成した作品です。

前景にテネルス、中景にアングスチフォリア、後景にウルグアイエンシスをメインにしています。クラッシックブロードは少しウエーブのかかった葉が特徴で、独特の雰囲気を醸し出してくれます。

ウルグアイエンシスは葉幅が細めで大きく育った姿体でも圧迫感を感じさせず、レイアウトに使いやすい種類だと思います。


Nr.4 さん:Echinodorus tenellus、Echinodorus angustifolius


私の思い入れのあるエキノドルスは現ヘランチウムのテネルムとアングティフォリウスです。

理由は私の好きな水景を演出するのに使い勝手が良いからです。

砂礫底床で川底の様な水景を演出するのにこの2種は雑草然とした草姿と、栽培許容範囲の広さが非常に使い勝手がよろしいのです。

炭酸ガスを添加せずとも栽培出来るので底床と石の繋ぎに使ったり低い茂みを作ったりと大変重宝しました。

この2種を見るたびに、また #川底感 なレイアウトもやりたいなぁと思います。

精神が落ち込んでいた時にこの水槽を見た魚譜画家の長嶋さんが褒めてくださって、すごく気持ちが救われた思い出があります


Nr.5 660KBさん:Echinodorus 'Junglester No.1'


ジャングルスターNo.1はワイルドさを残した改良品種

入荷当時は探してもなかなか見つからなかった記憶があります

新芽の鮮烈な赤さがとにかく印象的です



Nr.6 むつをさん:Echinodorus sp.



赤い葉脈が特徴的な長楕円形のエキノドルス(種類不明)

Co2添加下では鮮やかな赤色の新葉を展開し、株の外側に向かうにつれて赤褐色のかすれ模様からやや淡い緑色に変化します。自身で保持する種の中では一番見応えがあり好きなエキノドルスです。

同定は未だにできていませんが、圧倒的な美女を見かけた時に「名前だけでも知りたい」という気持ちを抱く感じに似ているのかもしれません


Nr.7 ◆オニヌマ鍵蝦◆さん:Echinodorus 'Green Chameleon' 


東南ポットで比較的安価に入ってくるエキノドルスながら、明るいグリーンの細葉と赤く染まる葉脈がなんとも美しい品種……条件によってはレッドエッジも入ります。

…なのですが、育成が個人的に苦手で水上葉みたいな葉を出し続けています。

色味もくすんでしまって力不足を呪う限り。可愛いサイズで収まってくれているのでこれはこれで好きですが。


Nr.8 大野さん:Echinodorus ’Ozelot Green’


中学生の頃に東京のショップを訪れた際に展示水槽に植栽されていたE.オゼロットグリーン

それはもう、見たことないぐらいの特大株で今でも忘れられない衝撃を受けた…種類としてはメジャーどころだが、なんだかんだであの株を見てからずっとお気に入りの品種です


※オゼロットグリーンは大野さんがお勤めのリミックスみなと店さん(愛知県名古屋市)でも展示、販売中ということです!

リミックス各店舗の中でもみなと店さんは言わずと知れた中京地方の水草の中心地です!行かねば!!(green)


Nr.9 豊津商店さん:Echinodorus horemanii 'ダークグリーン'



ホレマニー・ダークグリーンの推しポイント 

私自身好きなエキノドルスには限りなく、入手して育成したものは大体愛着があるのですが、やはり一番というとホレマニー・ダークグリーンになります。

ダークグリーンというロカリティや採集年がついていない名前からお分かりの通り、かなり昔(最近の採集者者が誰とか、タグがどうしたとか、〇〇便だとか、そいうコトのない時代)に日本に入って来たものになります。

この辺の事情は若輩の私よりもRootsやAQUA CENOTEなどのショップの店長様に聞かれた方がより詳しく分かりますので、お勧めします。

私とこのエキノの出会いは15年前になります。当時中学生だった私は近所の熱帯魚店に足繁く通っていました。そのショップはFeedOn(blogが残っておりとんでもなく面白い、昔のアクア業界を知りたければここを掘ると良い、メタハラで弁当を温めるという古の知恵が手に入る)といい、黒田氏(アクアリウムバスの仕掛け人、新中野の店舗は無くなったが関東各地のホームセンターに現在出店)が経営しておりました。

この店はドン・キホーテのようなお店で、兎に角商品が山積みで歩道ギリギリまで商品が陳列されており、頭上の衣装ケースやガラスケージにクリプトやアヌビアスなどの鉢がギュウギュウに入れられていました。さらに、謎の御香が焚かれており家に帰ると寄り道したことが親にバレる、そんなお店でした。


話が脱線しましたが、正にフィードオンの中心に置かれた1200×1200×450の水槽(今にして思うととんでもない水槽で、店の中に湿地があるが如きで、天井から吊るされたメタハラの色々な光に照らされて、多重多様な水草とプリアペラ・インターメディアが群泳する様子は言葉にならない)に鎮座、いやたなびいていたのです!正直最初はなんの水草か分からず、やたらと黒い塊が入っているなという印象しかありませんでした。

エキノだと認識してふと店長に値段を尋ねたのですが(今も一部そうですが、販売しているすべての水草に値札がついている店は少ない。勇気と知識と厚い財布がないと恥をかいて、買い物すらできないのが水草屋なのだ)「49,800円。」との一言。(今では考えられない金額かもしれないが、正直この当時は値頃感があった。もはや水商売の値段だが、アクアショップもまた"水商売"なのであった)ということで、ダークグリーンは高嶺の花(こんな時代でも最安値500円から売られてしたカメルーン便やギニア便のアヌビアスは、昔も今もちょっと不遇)で見ることしかできなかったのです。

しかしながら、高校時代にセールがあり、29,800円(確か、この金額であっているはず、ずいぶん安くなった印象がある、所詮相対取引、納得感が重要)に値下がりしなんとか入手することが出来ました。

購入に際しもちろん水槽から抜いてもらうのですが、店長の一言「カッコいいすよね。(この一言に全てが詰まっている、美しいや浪漫があるなどの意味を凝縮させている、投げやりな言い方だったが私にはそう聞こえた)」。

以来、私の手元にある……と、言えたら良かったが残念ながらこの株はロストしてしまいました。理由を説明します。

ご存知のようにエキノドルスは寒さに強いので、アクアリウムに行き詰まると野外に置いてある90cm水槽(今や10年の時を経てヒキガエルが例年産卵しに来るようになり、立派なビオトープになった)にとりあえず放り込むということをしていました。

1度目は大学入試の際に約2年間。この間は問題ありませんでした。大学時代も終わり、就職すると関西に行くことになり(水草の聖地たるRootsやナチュラに頻繁に行きたいがための転勤希望が通ったため)、足掛け5年野外で放置してしまいました。コレが良くなかった。

同様に水槽に入れていたウルグアイエンシスレッドとグイアネンシスとの生存競争に負け、いつのまにか無くなっていたのです。なんと残念、やはりホレマニーよりウルグアイエンシスの方が強健です。

その後、ダークグリーンに関してはRootsやAQUA FORTUNEで再び買って、ひたすら巨大化させています。


ところで、フィードオンの足立鹿浜店のロイヤルホームセンターの入り口にはダークグリーン単植の水槽があり、金魚が泳いでいます。バイトの人に聞いたら非売ですと言われたような……いや売ってくれよ!


feedon足立鹿浜店の非売?ダークグリーン。

GEXの90cm水槽、照明はADAのメタハラ、フィルターはエーハイム、水草はエキノドルス・ホレマニーダークグリーン、泳がす魚は金魚。見れば見るほどカオス。中野にあった頃のFeedOnを凝縮したような水槽

長らく私の駄文に付き合って頂きありがとうございます。最後に、まだ書いていなかったホレマニー・ダークグリーンの推しポイントについて話したいと思います。


「カッコいいっすよね。」


豊津商店




Nr.10 melさん:Echinodorus 'Hadi Red Pearl variegata'

Ech.'ハディ レッドパール’斑入り

水草好き、斑入り好きなら外せないエキノドルスの改良品種。

2016年に初入荷したもののそれから長い間入荷が途絶えていましたが、2024年にようやく再入荷しました。

水上葉の鮮やかな斑は水中では薄れてしまいますが、元のハディレッドパール自身の色彩に斑由来の模様が乗ることで非常に美しい品種になっています。

このような品種が増えることで、これまで原種や採取物を中心に楽しまれてきたマニア向けとも言える水草栽培が、より多くの人に広く愛される植物へと発展するきっかけになることを願っています。



Nr.11 XIN(シン)さん:Echinodorus sp.'リアルレッド'、Echinodorus 'ホレマニーオレンジ'、Echinodorus portoalegrensis

Ech.sp.'リアルレッド'

関西の老舗熱帯魚店に残っていた最後のエキノドルス。

細身の草姿に臙脂に色ずく新芽が妖しい魔力を放つ。

出自の不確かさも相まって、神秘的な印象を受ける。

元々はワイルドエキノとして入荷し、展示水槽に25年以上鎮座していたという。

馴染みの客に売ってくれと言われ、引き抜こうとしたところ低床内に地下茎を発見、増殖に至ったとのこと。

当のご本人がなかなか来店されないとのことで、いくつかある中で一番大きな子株を譲っていただけた


Ech.’ホレマニー オレンジ’

かつて千葉にあった名店、ワールドフィッシュの名を今に伝えるエキノドルス。

曰く、閉店する折に笹塚の名店の店主が買い取り、以前ワールドフィッシュに勤めていた綾瀬の名店の店主へと増殖株が贈られたのだとか。

整った草姿と、その名にふさわしい柔らかで、それでいて鮮烈な新芽の色合いは唯一無二。

この株は不注意により生長点をダメにしてしまった結果、根本から芽吹いた子株に再生への希望を繋いでいる。


Ech.ポルトアレグレンシス

アパートの片親というのも納得の独特の捻りの入る草姿

関西の老舗熱帯魚ショップにて、2代目の店主様が先代から受け継いで維持・増殖されていたものをお譲りいただいた。

長く付き合えるというのもエキノの魅力であるし、いい草はどこかしらに残る、ということだとも思う



Nr.12 ツネオカ(元Yazawa)さん:Echinodorus'serbus’、Echinodorus'Hadi Red Pearl’、Echinodorus opacus ’サンタマリア’(入荷年不明)、Echinodorus’Aquatica’、Echinodorus longiscapus(HBD)


Ech.'セルブス'

ロシアの育種家による作出で知られるエキノドルス。e-scapeの轟さんから”水上化が難しい”と聞いて購入。
導入から程なくして浮葉様の葉を展開し始め、”そんなに難しくないのでは?”と思っていたらそこから半年近く浮葉だけを出し続けた根性のある品種。

流通量もさることながら似た表現のオゼロットグリーンが如何に優れた品種か教えてくれた。

Ech.’ハディ レッドパール’

我が家で一番仕立ての良い品種。

丸みのある葉で葉柄の短い小型種という印象が強いのだが、水上で可愛がった結果、草丈40cm前後のなかなかのサイズに育ってしまった。

この草姿のまま水中葉になれるなら新しいスターになれそう。

誰か綺麗なエキノの撮り方教えて下さい。

Ech.オパクス 'サンタマリア’(入荷年不明)

採取された年数毎に区別される産地のオパクスだが、筆者はそれぞれの違いを理解しておらず、混ざったら面倒なため一番安い種類だけを育てている。

オパクスとしてはその丸みを帯びた葉が特徴的である。先日植え替えたらこの草姿にして芋が全く無かった。

オパクス2000と似たタイプかもしれない

Ech.’アクアティカ’

昨年あたりにポツポツ入荷していた気がするがプッツリ入荷が途絶えてしまった。片親がホレマニーグリーンらしいがあまり深緑系感は無い。

この株はシンガポール便でトロピカ便と比べて葉が面長らしい。利きアクアティカしたら間違える自信がある。

Ech.ロンギプスカプス

かつてのバース便で入荷したとされる原種系エキノドルス。

水中では育成難種という噂を聞いていたが、床土にした砂の効果もあり、確かに成長は緩やか。

しかしながらこの面長で透明感のある小さい葉にこの品種のポテンシャルを感じ、今回紹介させていただいた。


Nr.13 小魚さん:Echinodorus 'Foxtail'、Echinodorus ‘Harbich Red’

Ech."フォックステール"



水中だと赤いマーブル模様が出て小型な草体がお気に入りのエキノドルスです

小型のエキノドルスを調べていた時にアクアフォレストのブログでライナーズフェリックスと共に紹介されていたのを見て知りました。その後セルバス北赤羽で購入しました

水中では調子を崩したため水上で楽しんでいます




Ech.'ハービッヒレッド'



ライトグリーンの大振りな丸葉が魅力的な品種です!

熱帯魚店の販売水槽の片隅に特にタグも何も付いていないPOTで並んでいました

お店で見た時は小さかったんですが…一気に急成長して水上葉まで展開してきました(まだ植えて一ヶ月程度です…)

同じ配合で植えてるE.スペクトラやE.ホレマニーレッドはゆったり伸びてるので、ハービッヒの成長速度はなかなかだと思います笑




Nr.14 生き物屋PooLさん:Echinodorus osiris(インボイス)



今回改良エキノドルスを調べるきっかけになったのは、Ech.オシリスで入荷してくるこのエキノドルスとの出会いである。

Ech.オシリスといえば本来はメロンソードを指すはずなのだが、どう見てもこの株はメロンソードには見えない。


調べていくとこのタイプのオシリスはバーシー、'ダブルレッド'、'ルブラオシリス'、'ビューティーレッド'や他様々な名前で流通存在しているようで、バースはバーシー、カッセルマンは’☓バーシー’、ラタイは’ビューティーレッド’と言っていたり…。

初めは”商品名”で流通し、”種”となり、さらに”品種”になる。

このエキノドルスこそが改良エキノドルスがよく分からない原因の大きな1つであり、改良エキノドルスのはじめの1つ、調べれば調べるほど奥深く、これを知らなきゃ始まらない大切な品種


※PooLさんが店長を勤められているセルバス北赤羽さん(東京都北区赤羽)はこちらのオシリスをはじめ、関東でも屈指のエキノドルスが溢れるお店です!
店内所狭しと様々なエキノや珍水草が並んでいて、見ているだけでも心が踊ります…!是非一度覗きに行ってみてください!きっと虜になりますよ(green)



Nr.15 あまみやさん:Echinodorus sp.’Saturn’



今回はお気に入りのエキノドルス特集ということで、「どれを紹介してやろうか・・・」と内心ウキウキが止まらず、頭の中で様々なエキノドルスたちが、浮かんでは消え、浮かんでは消え...を繰り返していたのだが、よくよく水槽を見てみると本当に消えていた種類が何個かあったので、必然的に消えなかった、丈夫な種類を挙げる運びとなった。

というわけで、私が今回紹介したいエキノドルスは、こちらのエキノドルス サターンです。

大変残念なことに、「これは本当にサターンなんですか?」と聞かれれば、「全然わかりましぇん・・・涙」と答えるしかない、おのれの不勉強を呪いつつ、まぁ購入時の名称ということで、ここは目を瞑っていただきたい。

本種の魅力については、枚挙に暇がないというか、まぁ画像を見ていただければお分かりのとおり、とりあえずデカいですよね。
なんかもう全体的にボリューミーで、奥行き60cmの水槽幅をビックリするくらい綺麗に埋め尽くしてますよね。

こんな水草、昨今のネイチャーアクアリウムに使えるはずもなく、「誰が買うねん」といった具合ですが、かと言ってダッチアクアに使えるかと聞かれると、「まぁ入れるくらいはできるけど、バランス悪いよね」みたいな感じになっちゃうと思うんです。

ていうか、エキノ全般そんな感じですよね。
大してレイアウト映えもしない、水槽内で暴れる、価格も高め...正直、今流行りのアクアリウムみたいなのには全然向いてないと思います。

でも、いいんです。綺麗だから。流行りに迎合しないスタイルもなんかカッコいいじゃないですか。みんなもやりましょう、エキノドルス!

"自分の心底気に入った種類を、愛情を持って丁寧に育ててあげれば、エキノドルスたちもきっと、あなたの期待に応えてくれるはずです。"

って昔のアクアジャーナルに書いてありました。





Nr.16 B・F・ビーフ(釣/水草)さん:Echinodorus 'Hadi Red Pearl variegata

Ech.ハディ レッドパール(斑入り) 在りし日の姿


エキノにハマるきっかけとなった中型エキノ。
そんなにデカくならないと勧められたことで導入。無事30キューブの半分以上を占拠されるに至る。


葉は縦には伸びず大き目の丸葉を元気よく出し、センタープランツとしての役割を十分こなすポテンシャルを持つ。

新芽は赤寄りの茶色で、大きくなるにつれ濃いめの緑に変わる。水面に対して水平に葉を広げるため、魚やエビたちの隠れ家としても優秀。

虎斑が美しく成長速度も速いことから、見ていて飽きない良いエキノ。


現在 Ech.ジャングルスター No.1の森


その後エキノ好きが高じてジャングルスターNo.1を導入したところ、みるみるうちにジャングルスターのジャングルに覆われ、最近は生死不明になってしまった…。

生きていることを願いつつ、60cm水槽立ち上げのためのリセット時に捜索予定。



Nr.17 shigeさん:Echinodorus uruguayensis 'Red'、Echinodorus horemanii ’ヴィルデ’


Ech.ウルグアイエンシス レッド

2019年に京セラドームの天下一植物界でトールマンさんから購入しました

当時はエキノについてそこまで知らなかったので何も考えずに買いました

存在感のある赤がお気に入りです

ジャングルスターNo.1との違いがあまりわからないため、違いを確認するために現在ジャングルスターNo.1を購入して育成中です


Ech.ホレマニー’ヴィルデ’(入手時名称)

2016年頃に購入しました

細長い葉の透明感が大好きな種類です



Nr.18 犬とネコさん:Echinodorus'Rubin'、Echinodorus 'Uruguayensis Variegated'


Ech.'ルビン'


私が初めて買ったエキノドルスはEch,ルビンでした。

ルビンを選んだきっかけは、”たまたま安く売っていたから”です。

元々エキノドルスに興味はあったのですが、本格的な水草水槽の設備がなく、また大型化した場合持て余す可能性が高いので入手を渋っていました。

CO2無添加、底砂は砂利を使用した60cm水槽がこれ一つでいっぱいになるくらい立派に育ってくれました。

次々と魅力的で素晴らしい改良種が出回っているのでルビン自体あんまり見ない印象ですが、良いエキノドルスだと思います

今となってはエキノドルスはデカければデカい方が好きです


Ech.'ウルグアイエンシス バリエガータ'

次にご紹介するのはEch.'ウルグアイエンシス バリエガータ'です。

エキノドルスの中でも、もともとウルグアイエンシスが好きだったのでバリエガータという品種が売ってるのを見つけた時は買うのは即決でした。

比較的安価ですし、他エキノのオゼロットなどの赤斑の入る種は私は相性が悪くなかなか綺麗に育ってくれないのですが、この'ウルグアイエンシス バリエガータ'はとても綺麗に育ちました。

育てやすくてカッコいい大好きなエキノドルスです。



Nr.19 たっぷりたらこさん:Echinodorus opacus from Verde


Ech.オパクス "ヴェルデ産"


2019年に子株を購入し、株分けを繰り返しながらここまで維持しています。我が家では最も古株の水草となりました。

深緑の丸葉に入るパキッとした葉脈が大のお気に入りです。

当時水草水槽を始めたばかりの私には少々高価な買い物でしたが、初めて見たときの感動を忘れられずドキドキしながら購入したことを覚えています。以来6年間、今も変わらず私の目を楽しませてくれています。

最初は60センチ水槽でオパクス畑を目指していました。ぐんぐん大きくなり想像していた畑とは異なりましたが、無事目標を達成できました。

成長速度は比較的緩やかで尚且つ丈夫なため、無理なく維持できるところも魅力です。

気付けば我が家の水槽にあるのが当たり前になっていたオパクスちゃんですが、今回改めて購入当時の気持ちを思い出すことができました。これからも変わらず可愛がっていきたいと思います。


Nr.20 megid arkさん:Echinodorus horemanii'座標軸'





私が想い入れのある水草はエキノドルスホレマニー座標軸です。

エキノドルスの中でも自分の特に好きなホレマニー。その中でも一際美しい個体で、透明感のある深緑の葉、短くて幅広のブロードリーフ、縦横に入る網目状の葉脈どれをとっても素晴らしい個体だと思います。

当時の採取場所は今では不明ですが、WILD個体に由来するとのことで育成はやや気難しく感じました。

しかし、巨大化しがちなホレマニーの中でもサイズが出づらく葉数が揃えば更に美しくなるため是非育てて頂きたい水草です。


屋外で栽培した物

太陽光のような波長と光量で育てると幅広になる傾向がありそうです




Nr.21 滝川さん:Echinodorus 'Harbich marble'




こちらのエキノドルスは2023年にスリランカ便で入荷した品種です。

水上育成では斑が安定しているので気に入っています。

3株ほど育成していましたが斑の入りには個体差があり、写真の株は綺麗な方です。

ちょっとしたこだわりですが、ネオグラスエアなどの少し高級な容器に入れると鑑賞性が上がり、より手をいれるようになるのでお気に入りの株だけでも試してみては…?

※こちらの美しいエキノの植栽スタイルはAQUA SHOP TRiMさん(福島県福島市)に行けば実物を見られるそうです!

エキノドルスの新しい楽しみ方の一つとして色々コツなど伺ってみたいですね!(green)


Nr.22 とぐ@しろシロッコさん:AZ1110-16RS collected 01/12/2010 Ech.sp 'Zephyranthes' from santiago-1 Rio Uruguay、Echinodorus horemanii"ダークグリーン"

Ech.sp.'ゼフィランサス'

エキノドルスを集めるきっかけとなった本種

もともとは水槽内のカラシンの多さに、エキノドルスを植えた水槽は非常に安定すると伺ったこともあり導入しました

ゼフィランサスは一度スイッチが入るとあっという間に巨大化し水上葉を展開するので乱用厳禁だとは思います

育成も容易で砂利環境で育ち、葉は硬質で厚みがあり特徴的な幅広の葉を展開し、非常に魅力あふれるエキノドルスです

大型水槽をお持ちの方に是非オススメしたい一品です

Ech.ホレマニー "ダークグリーン"


新芽から数枚が赤くなるタイプのダークグリーン。

正直ここまで鮮やかな葉を展開してくれるとは思っていませんでした。ホレマニーの沼にのめり込むにはうってつけの品種だと思います

余談ですが、こちらはエキノドルスを真上から見たいという願望から、深さ40cmに満たない睡蓮鉢に植え育てていた株です

育成環境も手軽なものにしたく思い、赤玉ベースの睡蓮用土にスポンジフィルターと観葉植物用のスポットライト一灯のみの環境で育ててみました

結果、誰でも導入しやすい環境でとても良い結果が得られたと思います



Nr.23 スーパーよしおたんさん:Echinodorus’Yelow Sun’


Ech.'イエローサン'

私はどうもポップでキュートな感じの水草が好きみたいで、カッコイイ!じゃなくてポップでキュートなエキノドルスってあるのかしら……と漠然と考えていた時に、インターネットで聞き慣れない名前のエキノドルスを見つけました。

”わー!かわいいなー!理想のまんまる葉っぱー!”と小躍りしてお迎えしました。

最初は60cm水槽に植えましたが、あっという間にぎゅうぎゅうになり、気の毒になって90cmに引越しました


にゃんこもビックリの元気さ


60cm水槽でぎゅうぎゅうになって引っこ抜いたのですが、これでもまだ可愛げのあるサイズでした……。


90cm水槽に浮かぶうちわ…


ちなみに私の手はでかいほうです


 90cm水槽に移動した後、イニシャルスティックを貢ぎすぎたせいか、クソデカうちわとしか言いようのない丸葉が多数生成され、水槽の半分が日陰になってしまいました

はじめは巨大過ぎて恐ろしかったのですが、下から見上げるとなんとなく雨宿り気分が味わえることに気が付いてからはメルヘンな感じでお気に入りです

メルヘン気分を味わいたい方にはオススメのエキノです!


Nr.24 Whitemoonさん:Echinodorus sp. 'Teles Pires’、Echinodorus sp. 'Jurua Tourmaline'、Echinodorus sp. 'Alto Rio Negro'、Echinodorus veronikae、Echinodorus sp. from Sao Paulo(三浦氏採集)、Echinodorus sp. from São Paulo、Echinodorus sp.São Francisco

Ech.sp. ’テレスピレス’

今となっては幻の存在となりつつある細葉系エキノドルス。

見つけたときは「これは、、、まさかテレスピレスですか、、、??」と大分テンションが上がりました。

細葉系エキノはいずれもクリプトの如く癖強なので、新しい水に慣れるのに時間がかかる傾向がある。

運よく手に入ったら、動き出すまでしばらく浮かせておくことをお勧めします。

同じく細葉のハイコブレフェリーが見たいなぁ


Ech.sp.'ジュルア トルマリン'

2007年にワイルド便できたアマゾニクス系のエキノドルス。

その昔はヤフオクではたまーに出てたけどここ10年くらいは絶滅状態。

西の名店Green Noteのしんぺー氏が復活させ、2024年の天一より販売を始めた。

同じくワイルドアマゾニクス系であるspパンタナールはピンク色っぽい新芽を展開するが、こちらの赤みはさらに濃く、非常に特徴的。

シュートをよく出しますが、子株が全然大きくならないので増殖に時間がかかる模様


Ech.sp.Alt Rio Negro

ロンギスカプス系のいわゆる黄緑系エキノ。

この手の黄緑系は二酸化炭素添加は必須で気を抜くとすぐに水上葉を展開し始める。

強光下では新芽の先端がピンクに染まり、ワイルド感高まる草姿になる。

白砂を敷き詰めてコリドラスを泳がせたくなりますなぁ。



Ech.ベロニカエ

エキノドルスと言えばのKarel Rataj博士のラタイ便由来。

カメルーン産ということで、そんなわけない、ファームで混じったやつだろといろんな人に怒られたかわいそうなエキノの一つ。

2025年現在、市場で見かけるアフリカヌス、sp.カメルーン、リアルレッドあたりとはお友達だと思われる。

とは言え草姿は唯一無二でかっこいいエキノ。


Ech.sp.'サンパウロ産'(三浦氏採集)

Ech.sp.'サンパウロ産'

サンパウロと名の付くエキノはよいエキノである。

2025年現在、日本で見かけるものは二種ある。

1枚目は Aqua zoomの三浦氏が採取した古き良きエキノ。

環境によっては葉脈に沿って赤みが入っているが、状態があがってくると葉の全体に赤みを帯びるようになる。

2枚目はアパートっぽい雰囲気を持つワイルドエキノでこちらは新芽が赤く染まるので他の深緑系と判別可能できる。

いずれのsp.サンパウロも良いものです。


Ech.sp.サンフランシスコ

吉野敏氏が採取した槍型の葉を展開するエキノ。

Aquatic sceneの最初の見開きページに載っているもの。

この手のワイルドエキノの例に漏れず水中への適応レンジが狭く、水上葉と水中葉を行ったり来たりしている。


Nr.25 もびお@JMDさん:Echinodorus 'Chameleon' 

Ech.'カメレオン'

私の推しエキノドルスはカメレオンです!

エキノドルスにハマったきっかけになった種類で多彩な感じが好きです。

意外と繊細で水温が低かったり肥料が切れたら葉が落ちてしまう印象があり、追肥などは定期的に行なっています

ちなみに1番好きなのはウルグアイエンシスです!笑



Nr.26 ちゃとらんさん:Echinodorus horemanii "Orange"

Ech.ホレマニー"オレンジ"

複雑な色彩表現を持ち、上見が美しい


 私が好きなエキノドルスは、Ech.ホレマニーオレンジです

オレンジに染まった新芽はしっかりと濃い色にも見えますが、実際には艶やかで透明感が高く『エキノドルスを上から見る』という楽しみを教えてくれました。

オレンジ色が強く出るのは新芽の頃だけで、次第にオレンジから淡い黄色、緑へと変化していきますが、表情豊かなその変化はとても美しく、ダークグリーンや明るい色のホレマニーと混ぜると紅葉のような色味を楽しめます。

 成長速度は他のエキノドルス同様に早く難易度も高くありませんが、ホレマニー系なので成長点の横移動の性質が強いです。それも結構強いです…
壁に当たるなどして横移動ができなくなると斜め上に伸びながら成長するため、非常にいびつな形となり植え替え時に苦労します。

そうなるとかなりの葉を落とさないと植えられず、その際に落としすぎて調子を崩し最悪根茎だけになる…といった事も起こりかねないので、程々に成長したタイミングで植え替えたほうがいい気がしています。




Nr.27 だいこんアクアさん:Echinodorus 'Uruguayensis Variegated'

Ech.'ウルグアイエンシス バリエガータ'


本種はエキノドルスに触れる際、最初に憧れた品種の一つです。

バリエガータと言う名称ですが、所謂マーブルクィーンの様な白い斑では無く、レオパード系(オゼロット,ライナーズ,フレーム等)に似た褐色の斑点が入ります。

葉の形状も"ウルグアイエンシス"と言う名を冠していますが、一般的に流通する"無印のウルグアイエンシス"よりかは葉と葉柄の形状はホレマニーに近い印象を持ちます。

由来や交配種もよくわかりませんが、雰囲気から東南アジアファーム辺りかなと思います。

少しネガティブにも聞こえる部分を先述してしまいましたが、本種の魅力はなんと言ってもホレマニーに似たナローの葉に褐色の模様が入る事です!

しかもグリーンフレームの様に斑点の直径が大きい!!!そしてデカい!!カッコいい!!

ホレマニー系の様に大型水槽で巨大化させたら目を引くこと間違いないと思います。



Nr.28 日淡青年さん:Echinodorus 'Spider Net' 

Ech.’スパイダーネット’




 私の推しエキノとしては、エキノドルス ‘スパイダーネット’を挙げさせていただきます。

まともな写真がなく申し訳ないのですが、スパイダーネットの水上葉の新芽の赤色や鮮やかな赤みと透明感、細かい柄を併せ持った水中葉、両方がとても好きで育てています。 

ジャングルスターやホレマニーレッドなどの深い赤色のエキノドルスも良いですが、個人的にはこういうの淡い色味のものが特にすきです。 

現在は屋外の容器で水上栽培していますが、これから子株が取れれば水槽に移したいと考えています。楽しみです!





Nr.29 まさ@某ブログ管理人さん:Echinodorus horemanii(H.B.D)※Hans Barth Dessau


Ech.ホレマニー(H.B.D)

2001年1月都内某店にて

鉢植えにされ水槽に沈むその株は、葉長5cmほど、葉数4〜5枚の非常に弱々しい状態で、鉢に刺さるネームプレートには手書きで「エキノドルス ホレマニー (H.B.D)◯000円」とあった。

鉢にはコケが生えていたので、ある程度の長い期間ストックされていたことがうかがえた。
安い値段ではない。
しかも株の状態も決して良いとは言えない。
このままお店の水槽で枯れていくこともあるかもしれない。

もしかしたら次に来店するまでに誰かに購入されてしまうかも。
痛い出費だが、買わなかった時の後悔とどちらが辛いか?
購入しない選択肢もあった。

しかしその小さな葉の透明感に可能性を感じて、購入した。

それから24年、他のホレマニーとは全く違う、比較的小型のナローリーフのホレマニーに成長し、今も我が家の水槽でその透明感溢れる美しい葉を水流に揺らしている。



Nr.30 まささん Echinodorus sp.

謎の小型黄緑エキノ


何年経っても大きさが変わらない謎の小型種です。

新芽は白〜淡いピンクで、黄緑色に染まります。

30cm水槽でも楽しめるサイズ感は貴重だと思います




特集:エキノドルスの改良品種系統図を作ろう!


エキノドルス改良品種相関図 green版(資料提供:生き物屋PooLさん、お餅さん)


今回エキノドルス特集をやろうと決めた時に、改良品種の系統図みたいなものを作りたいなと思いました

僕が水草に夢中だった少年時代、アパートやローズ、レオパードの原種に近い改良品種はすでにあり
その後オゼロットやジャガーなどの動物シリーズ、スモールベアやビッグベアなどのジャングルスターシリーズの輸入が始まり、次々にやってくる新しい改良品種の目新しい表現に目を奪われ、夢中になったものです

時代は下って社会人になってアクアリウムから疎遠になり、久々に見てみるとズーロジカやハンスバースデソー、東南アジアファームに由来する聞き覚えのない新しい改良品種が大量に輸入され、”名前は派手だけどそれぞれはどう違うんだ?”と年寄りじみた感想を抱いた覚えがあります

今回はエキノの改良品種がどういった由来で作られたものなのか、その出自や繋がりを調べ、公開し、集合知を集めるための叩き台として、主に現在も残るメジャーな改良品種についての大まかな相関図を作ることにしました

今回のリストの作成にあたってはアクアリウム関連の古い本を収拾され、情報を整理されている生き物屋PooLさん、根拠あるエキノドルスの情報を集めているお餅さんにご協力を仰ぎ、まず広範な改良品種のリストを作成し、そのリストを元に各改良エキノドルスの品種の相関図を作成しました

※僕は元々お二人が作っていた資料に相乗りしただけです

お二人が主に参考にした文献は

Christel Kasselmann「Echinodorus」
Karel Rataj「aqua Journal of Ichithyology and Aquatic Biology」(白本)「ODORÚDY ECHINODORÚ」(黒本)
Barth Stallknecht「Pflanzen fürs Aquarium」
山﨑美津夫、山田洋「世界の水草」
吉野敏「世界の水草728種図鑑」
AQUAPLANTS 3号など

可能な限り一次資料に近しい情報が掲載されているものに根拠を求めました。探しても根拠が見当たらないもの、疑問点が残るものについては点線で示しました

繰り返しになりますが、今回の図はあくまでも叩き台を作ることを目的としており、さらに詳細で広範な図を作り、”改良”するために皆様からのご意見や、資料の提供を賜われればと思っております

(green)疑問、訂正のお問い合わせはこちらまで






アクアリウム視点の改良エキノドルス関連図 お餅さん版


今回のGreenジャーナルはエキノドルス特集ということで、アクアリストにはエキノドルスの中でも特に身近でありながら混乱の多い改良品種について、少し自分なりに調べてみたことをまとめてみたいと思います。

早速題材と矛盾するようですが、改良品種に限らずアクアリウムにおける情報というものは基本的に信憑性が高いものが少なく、資料により内容が矛盾している、何を根拠に言っているのか、どこから引用したのかが不明瞭なのは勿論作出したファームの主張する情報が事実と異なっている、ということも多々あり、何が正しいのかはとても判断できる状況ではありません。

現に有名な赤系品種、スモールベアの作出にはパルビフロルスE. parviflorusが関わっていると言われていますがLehtonen &Falck(2011)によりそれが否定されている例もあり、科学的知見の少ない趣味の世界ではそのような事が頻発していることを実感させられます。


ですが自分はアカデミックな方面には現状明るくない上、学術的な論文であってもかなりざっくりとした記述であったり、明らかにツッコミを入れたくなるような内容であったり、研究者ごとに見解が大きく異なっていたりといったこともあります。

出自が謎の株も多い他、基準となる信頼を置ける株を手に入れることが難しいこと等も考えるとその方面からはっきりさせるのも中々ハードルが高いように思います。

というわけで今回は、「アクアリウムの世界ではそのように言われている」という情報をまとめることにし、自分なりに形にしてみました。これは科学的な根拠に基づく情報ではなく、ファームが主張している、そのように考えられる、そう書籍に記述されている、というあくまで確実では無い情報の寄せ集めであることをご容赦ください。

個人的に信憑性が高そうだと感じた資料からまとめるように努めていますが、事実と異なる情報もあるかと思います。鵜呑みにせず、そういう風に言われているんだ、程度に軽く捉えていただけたらと思います。

詳しく調べる術が無く、ただただ情報が錯綜しろくな資料や画像も見られず、得体の知れない偽物すら出回っているという現状で少しでもエキノをとっつきやすく感じていただければ幸いです。

今回は特にとっつきやすさを重視し、現状流通のある品種等馴染みのあるものを掲載するに留めました。自分はこのようなことをするのは初めてで拙い物になってしまった他ホレマニーレッドやオゼロット等の関連種とされる品種が大量にあり複雑で見づらくなってしまっていることが悔やまれますが、これからもし発展版を作成することになった際の糧にしていきたいと思います。

最後になりましたが、情報源にしたのは主にアクアライフ、フィッシュマガジン、アクアプランツ3号といった書籍なのでぜひそちらもご覧下さい。

また、読んだ書籍等に新しい情報が載っていたり、購入した株の写真等を撮った場合積極的に趣味家同士で情報共有できれば、その混乱を少しでも回避し、またよりエキノドルスの魅力を感じやすくなるかと思います。拙い文にはなってしまいましたが、この記事を見て少しでもエキノドルスに関心を持って頂ける方がいらっしゃれば嬉しいです。

(お餅)

※疑問、訂正、ご提案はこちらにおねがいします



Postscript

伝説と現実のあわいで

日本で最も古く流通した改良エキノドルスは1985年に東南アジアのファームで発見され、現在でもキューピーアマゾンとして親しまれているEch.parviflorus"Tropica"である

"次にやってきたのは1986年当時E.ルブラオシリスE.osiris rubraやE.オシリス ダブルレッドE.osiris doppelt rotと呼ばれていたE.×バーシーEchinodorus×barthii Mühlbergだ。”吉野 敏(2005年).『月刊アクアライフ4月号増刊 AQUAPLANTS NO.3』.株式会社エムピージェー,[96ページ],

このバーシーについては掘り出すととんでもない沼があるので横に置いておく。

80年代の日本は60年代の第二次熱帯魚ブームもすっかり落ち着いて、すっかり趣味として定着した安定期にあったと言えるだろう。70年代の好景気の延長にあり、この後に続くディスカス、水草ブームの下地が形成されていった


今回のエキノドルス特集では改良品種の系統図(のようなもの)を作ってみようと思い立ち、生き物屋PooLさんとお餅さんにお声がけし結果的にほとんど二人の手によって簡易ではあるが相関図を作ることができた
当時の視点を和書と洋書とを併用して俯瞰し、可能な限り出典を検証し確認できる品種を並べた(…つもり)

 先にも述べたように改良エキノドルスの歴史は80年代半ば以降に始まったものであり、当時は欧州ファームによる情報発信もあり、熱帯魚関連の出版物も多く、舶来品でまだ希少であった改良エキノドルス達は書籍にも記録が残される事が多かった(勿論その内容の正確性については千差万別だが)
80年代であれば、当時を知る人もまだご存命であるため、その記憶を尋ねればある程度は事実関係の検証もできるだろう


90年代後半から興った深緑のエキノドルスブームの情報は一部の専門店のサイトや専門誌にまとまった情報はあれど、そこからこぼれ落ちたものは当時の雑誌等を細かく当たれば多少は見つかるかもしれないが、更にそこからもこぼれたものはもう探しようがなく、ご存知の通りその隙を悪用する輩も暗躍していた(現在進行系?)ためより混沌としている

当時は個人HPやケータイサイト、掲示板、少し遅れてblogが花盛りの時代で、各々が思い思いにインターネットという新たな地平に理想郷を作らんと情報を発信し、稚拙ではありながら百花繚乱の様相であった

リーマンショック以降、それらを支えたgeocitiesやgoo、livedoor、excite、nifty、YahooなどのISP各社が次々にサービスの提供を辞め、結果数多の情報が藻屑と消えた


現在はどうだろうか?

いまや日本向けの水草の生産の主力は欧州からアジアのファームへと移り変わったが、ファームによる情報発信はほとんどなくなり、20年以上続く不況の煽りで出版物も減り、一方でファームから無数に送られてくる新作エキノドルス達を見向きする人は殆どいない

現代はとかく何にでもevidenceやfactを求められる時代だが、90年代半ば以降の情報は殆どネット空間には残っておらず、その情報の担保は僅かに残った当時の書籍に頼るところが大きい

つい最近も昨年閉店した新宿アクアフォレストの開店以来二十余年の入荷データがまとめて消えてしまったばかりである。ネット上の情報は消えるのである。

今回エキノドルスの情報を集める過程で、90年代半ば以降に到来したエキノドルスの多くは80年代に到来した古典品種よりも情報が少ないという感触を得た


当時を知る語り部が減れば、自然と話に尾ひれ背びれが付き、"伝説"が泳ぎだしてしまう

"伝説"は当事者以外には事実関係を知りようはなく、当事者でさえその主観からでしか語れない以上、語った瞬間から"情報"は歪んでいくのだろう。それはあらゆる歴史が証明していることだ

個人的には、今こここそが過去にありふれていたエキノドルス達の"情報"が"伝説"に変わってしまうデッドラインだという確信と焦燥感がある

自分ごときの微力では時の濁流に身を投じるしかないのかもしれないが、少年時代から親しみ、趣味として恩を受けてしまった以上は、可能な限り悪あがきをしていきたいと思ってしまうのだ

若者よ本を集めろ話を聞きに行け。50代以上の関係者よ資料を、写真を、データをを残せ。話を伝えろ。

もはや若者ではないけれど僕も聞きたい

全員一致で伝説になろうとする情報の手を掴もう



結びに


エキノドルス特集お楽しみいただけたでしょうか?

いつも言い訳的に繰り返し呟いていますが、僕自身はこのblogの連載を通じて何者かになりたいという気持ちはないんですが、今回の特集では大変多くの皆様にご協力頂いたおかげで良いものができた確信があり、微力ながら続けてきて良かったなぁと思っております

自分の大好きな水草であるエキノドルスという植物の魅力やその楽しみ方の幅広さ、懐の深さを一人でも多くの方に知って頂けるきっかけになれば幸いです

今回の特集にあたり、自分自身の未熟な部分や、能力の限界もしっかりと感じることができました

今後も驕ることなく、真摯に連載を続けていきたいと思いますので、変わらぬお付き合いを頂ければ幸いです

改めまして、ご助力を賜りました皆様に心より御礼もうしあげます

ありがとうございました

(green)

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