私的クリプトコリネ育成法:鉢編

2025年2月13日木曜日

How to TB便 クリプトコリネ 初心者向け 鉢物

t f B! P L
鉢育成は沢山コレクションできるのが良いところ

先日TBさんのお芋販売イベント「芋わるん」に参加してクリプトコリネを購入してきました

今回はこの草の導入を記録しつつ、僕が鉢でクリプトコリネを育てる際に実際に行っている養生、用土作り、育成について、自分なりに考えている事を書いていきたいと思います

ベテランの皆様から見るとカンチガイな部分も多々あるかと思いますので、気になる点があれば是非ご教示頂ければと思います


芋わるん

TeamBorneoさんの開催されたアグラ、ブセ以外のサトイモ限定即売会、芋わるんに参加してきました!

午前午後30人ずつで小さな会議室は熱気ムンムンでした

人生初の一桁台を引きました…

抽選だから残り物には福があるといいなぁと一番後ろの方で引きました…結果3番!

今までイベント抽選では常に真ん中以下だったので正直手が震え心臓バクバクでした、我ながら笑っちゃうくらいチキンです

当日目玉だったマハカムの黒いお芋は予算オーバーでしたが、1番を引いた方が無事に購入されたので、前日から購入する気だったヘラを買いました。トガも欲しかったです(何語だ?

戦利品


正直アレもコレも欲しいものは沢山あったのですが、予算がね……石油王になりたい

ということで、今回購入したクリプトコリネはこちら


Cryptocoryne grabowskii "Muara teweh"Barito utara Kalimantan tengah[TB1011]


現地写真を見て一目惚れしたグラボースキーです!現地くらい立派に育てられるといいなぁ…


養生

クリプトコリネは裸苗で購入した場合、一般的に水中にしても水上株にしてもまずは水槽にしばらく浮かべておいて、根が動いてから植えると溶けにくいと言われています(クリプトの溶けについてはストレス、アレロパシー、アポトーシス、ウィルスなど諸説ありますが未だに原因が分からないですね…)

それを踏まえて、我が家では購入してきたクリプトは2日~1週間程度強めのエアレーションをしながら色々と添加した水のバケツに浮かべておくことが多いです



今回は一株だけなのでバケツではなく大きめのプラカップに入れました

水は水道水でカルキ抜きは使ってません(加温するため細菌が増殖しやすくなる思われるため)

約400mlの水に添加したものはメネデール4ml(100倍)、オキシベロン0.5ml、リキダス2滴、グリーンゲイン(ADA)1滴、ECA(ADA)1滴

メネデールはあまり濃度は気にしていません。他はおまじない程度に添加してます

あまり色々入れすぎても良くないとは思うんですが、ついつい色々したくなるのは僕の優柔不断さが出てます


一応メネデールとECAは二価鉄、オキシベロンは発根促進、グリーンゲインはストレス低下、リキダスは総合栄養剤といった感覚で入れてます

この状態で強めのエアレーションをかけて放置します。冬は保温もお忘れなく


普段はこれで3日程度置いておくのですが、今回は2日で切り上げてみました


クリプトに限らず様々な植物の導入時に同じような処置をしていますが、これで草が溶けたことは今までないのでいつも行っています(ベゴニアだけは向きません)

ただこれが実際に効果があるのかは謎です


用土

前提として、わざわざ用土を配合しなくてもソイルやピート、赤玉土単用でも綺麗にクリプトを育てられている方は沢山いらっしゃるので、あくまで僕の場合の話です。そういうヤツもいるんだなぁ程度に参考にしていただければと思います


僕が使っているクリプトコリネ用の基本の用土配合は赤玉土1:日向土1にアマゾニア0.3、ほぐした長繊維ピート0.2です

配合だけでなくやり方なども基本的にはRootsさんがYoutubeで紹介されているヨーロピアン鉢物のスタイルを踏襲していますので、こちらを参考にすると安全安心だと思います



用土についてここが肝かなぁと感じているのは通水性、通気性、土の硬さのバランス、土壌pH、栄養、腐植質の量です

これらは僕が今まで趣味でやってきた山野草やガーデニング、家庭菜園などでも変わらない、植物育成のための用土の大切なポイントであると認識してます

そういう点では熱帯植物も温帯植物も変わらないと思います(大きく違うのは高温多湿でも傷まない有機質を使う点かな?)


なぜこの配合なのか?

クリプトコリネは自生地の状況から一部の愛好家の間で「ピートスワンプ系(酸性寄り)」「渓流系(弱酸性寄り)」に大別されています。

例外的に中性の土壌を好む種類もいるようですが、基本的には上記の2タイプに当てはめて考えると足がかりになると思います


ピートスワンプ系は丸葉の品種が多く、名前の通り腐植質に富み酸性度の高いブラックウォーターの泥っぽい薄暗い水辺(沼地)に自生しているイメージです。

※スワンプと言っても細流がちょろちょろ流れていたりするので、文字通りの”沼”のイメージには縛られないほうが良いのかなと思います

渓流系は細葉の品種が多く、流れのある明るい渓流の中で揉まれながら生息しているイメージです

こちらは砂利底で悠々と流れに揺られているバイカモ的なイメージがありますが、流れている水は透明なものから白濁り、ブラックウォーターまで一様ではないので、細葉だからといって酸性が向いていないわけではない(例えばボルネオ島の河川の大半は弱酸性の水質です)と思います

僕が先ほど挙げた基本の用土配合は、大体のクリプトコリネにとって無難なバランスを意識したもので、更にそれぞれのタイプに合わせて微調整して使用しています

例えば、ピートスワンプ系クリプトを育成する場合は鹿沼土や長繊維ピートを追加して腐植質を追加してpHを下げます。一方渓流系クリプトの場合は日向土や桐生砂を追加したりして通気性、通水性を更に良くするように意識します

ちなみに渓流系クリプトをピートスワンプ系の環境で育てると全く育たないのか?というとそんなことはなく案外立派に育つこともあります

これはクリプトに限らない事ですが、植物の持つ環境適応力の幅広さ、現地環境を再現することが必ずしも植物の持つポテンシャルを最大限発揮する最適解とは限らなかったりするので、自分なりの目安は持ちつつ実際に育ててそれぞれの種類毎の最適な環境を探っていくことは園芸の奥深い、面白い所じゃないかなと思います



今回用意した用土


基本の用土に富士砂とミリオンAを足してみました。富士砂は鉄分のために、ミリオンAはおまじないです


赤玉土はpHがやや低く6前後であり、水はけ、保水性、保肥性がある用土です。珪酸、アルミ、鉄を多く含みリン酸を吸着する性質があるため、その分リン酸を肥料で補ってやる必要があります

今回使用しているのものは硬質赤玉土(非焼成)で、普通のものよりは若干粒が硬い崩れにくいものです。天然に由来する赤玉土は産地や場所で質が多少変わりますが、近年ホームセンターなどに流通している安いモノはかなり崩れやすいので、購入前によく選んで崩れにくいものを選ぶと微塵が出にくく長持ちします

ちなみに赤玉土を焼き固めた焼成赤玉土というものもあり、これは更に崩れにくいので場合によっては便利なものですが、焼いた赤玉土は要するにセラミックに近い性質になっているため、使う際は別物と考えて若干の注意が必要だと思います


日向土はpHはほぼ中性な軽石の一種で軽石よりは比重が重いため扱いやすい用土です。こちらは多孔質で水はけ、通気性が高く、用土が硬く締まるのを予防する作用があります

赤玉土、日向土共に粒が崩れにくい点を重視していますが、赤玉土だけでは徐々に通気性が落ちてしまい、日向土だけでは保肥性、保水性が低く、硬すぎて根張りが弱くなるので赤玉土を混ぜる…といった点を考慮しています

アマゾニアは黒土を丸く固めたソイルで、砂礫系用土に欠けている有機質の補足を期待しています。いわゆる栄養系ソイルであれば何でも良いと思いますが、崩れにくいものが理想です(ノーマルでもかなり細かいパウダー状態のものも混ざっているので土ふるいでふるって粒を揃えておくと理想的です

長繊維ピートモスはソイルと同様に有機質の補足を期待しています。ピートモスは泥炭という草や水苔の分解手前の最終段階のもので腐敗しにくく、pHが低く、更に殺菌作用を持つためマルチング材としても使用します。粉のピートは目が詰まってしまうので僕は使用していません

※酸性度無調整のものを使って下さい

富士砂は最近ブセに使っていて悪くない感覚を得ているのでクリプトにも混ぜてみようとお試しで入れてみます。性質としては鉄分が多く、多孔質で比重が高い硬い重い石です

ミリオンAは普段入れないことが多いのですが今回はなんとなく入れてみました…能書きはHPを見てみて下さい


用土で重視しているのは、通気性、通水性がよく、硬さのバランスが良く、微塵が出ず、肥沃で腐らないことです


こんな事をしないでもアマゾニア単用やピートモス単用でも育てることはできるのですが、用土を工夫をしてみるのも園芸の楽しみのうちだと思います

なおこの配合自体は盆栽用や室内観葉植物用で販売されている培養土(ex.プロトリーフ 盆栽の土、室内向け観葉・多肉の土など)など、小粒の砂礫用土で有機質肥料の入ってないものをしっかり微塵抜きをしたものでも代用可能だと思います(ピートモスやソイルを追加した方が良いかも?)

粒の大きさは鉢の大きさに合わせて替えますがクリプトの場合は小粒がメインで中粒を使うことはまずないかなと思います。2.5号鉢以下だと小粒よりも細粒の方が良いという意見もあります



用土の混ぜ方

赤玉土と日向土は事前にふるいがけをして微塵を抜いています。余裕があれば配合前に混ぜてふるいがけをして、さらにシャワーで流して微塵を徹底的に抜いておくと最後の水通しで出る微塵が減るので効率的です

ほとんどの園芸において微塵はデメリットしかないのでとにかく微塵抜きにはこだわってます。盆栽をやると微塵抜きの話は耳にタコができるくらい聞きますよ(笑

微塵抜きに使う園芸用の土ふるいは1セット持っていると何かと便利なのでオススメです

また用土の粒のサイズを揃えることも大切で、これは鉢内に団粒構造を作ることを目的としています。気になる方はググってみて下さい

土の混ぜ方は硬いものと柔らかいものを一緒に混ぜると柔らかい方が削れて微塵が出るので、硬いもの同士、柔らかいもの同士で混ぜて最後に全部を混ぜるイメージです(今回は映えを意識して順番間違えてます)


赤玉と日向をしっかり混ぜます

富士砂、アマゾニア、ミリオンAを加えて更に混ぜます

いい感じです

長繊維ピートをほぐして混ぜます


用土を混ぜる時はチャーハンを作るようなイメージで、天地を返しながら少ない回数でしっかりと混ぜます

長繊維ピートは前日に水の中で揉んで湿らせておきます。混ぜようとしてもなかなか混ざらないですし、せっかく細かくちぎって入れても混ぜる途中で繊維同士が絡まって大きくなったりとなかなか手を焼きますので無理に混ぜる必要もないかなとも思います(通水性は下がりますが軽石の上に乗せてもいいかも

ピートモスを粒状に固めたセラのピートグラニュールや天然の粒状ピートモスというものもあり、そちらを使うと混ぜやすいですが、マルチングにも使うので長繊維ピートを我慢して使っています



毎回配合を考えるのも面白いですが、基本用土は暇な時にまとめて2~3L程度作っておくと使い勝手がいいです。配合はキチンとメモしておきましょう


植え付け

今回は兼弥産業のスリット鉢CSM-75を使いました

園芸では鉢は小さいものに植えて根が張るたびに鉢増ししていくのがセオリーとされています

今回の株の大きさを考えると2号・60サイズ以下が適正だと思うのですが、株にランナーが3本も着いていたので少し大きめの鉢を使うことにしました


大体スリットの高さまで鉢底石を入れます


通気性を確保するためにまず鉢底石(軽石や日向土の中粒など)を入れます。もちろん洗って微塵を抜いてあります。崩れにくく通気性の高いものなら何でもいいですが、比重が高いもののほうが鉢が倒れにくくなります


鉢底石が見えなくなる程度に薄く用土を入れます


鉢底石の隙間を埋める程度の用土を入れて、そこにマグァンプKやミリオンAをパラパラと入れます。マグァンプの量は僕は1号あたり中粒3粒程度(控えめ)を目安に入れてます。

セット時には根が肥料に触れないようにすることを意識して、撒いた肥料は更に薄く土を入れてカバーします

真ん中くらいまで土を入れ配置してみます

真ん中くらいまで土を盛り、株を配置してみます
今回の株はそこまで根が長くないので切りませんでしたが、長すぎる場合は1/3程度まで詰める事が多いです(ひげ根は残しても枯れることが多く、主根が残っていればまた出てくるため)

場所が決まったら用土を周りに入れます


ポイントは根がなるべく広がるように植えることです。鉢の中に小さい山を作って、その真中に株を置くと根が綺麗に放射状に広がります
用土は水やり時にこぼれないように8割程で収まるようにすると管理が楽になります

ピンセットでランナーの位置を調整

配置を決めたら割り箸などで鉢の周りを突いて用土をしっかり詰めます(結構大事なポイントです)
目安としてはプラ鉢を軽く揉んだ時に鉢の中に隙間(亀裂)ができないようにするイメージです



水通し


鉢上から水を当て微塵を抜きます

流水を当てて鉢に残った微塵を抜きます

粒が揃っていて排水性がある土、適切な水抜き穴が空いている鉢なら上から水をかけても溢れることはあまりないですが、そうでないと溢れる場合もあるので最初は控えめに水をかけましょう

また軽石やパーライト、水を吸ってない鹿沼土などは浮力が強く、せっかく混ぜても浮き上がって崩壊することがあるので注意しましょう(冬は冷水を使わないように注意)



水を張って下から通したり、水を張った桶の中で鉢を振る方法もありますが、全部水没させるとパーライトや鹿沼土、一部の軽石のように浮力が強い用土の場合下から浮いてきて全てが台無しになるのであまりオススメはしません


完成!


最後に長繊維ピートで鉢の表面をマルチングします。これはしなくてもいいですが、ピートでマルチングすると株が目立つのと、現地の林床の雰囲気が出るような気がしてお気に入りです


管理タグ(テープですが)も忘れずに


水通しが終わったらおしまい!ではなく最後に浸水作業があります

これは用土の芯まで水を染み込ませる作業です。用土の表面の7~8割程度の高さまで水を注いで2時間程度土に水を吸わせます(冬は加温を忘れずに)

用土が完全に浸水してないと土が植物体から水分を奪って萎れることがあり、それを予防する目的があります

僕はこの時の水にメネデールやグリーンゲインを入れたりもします


管理


このままタッパーなどの容器に納めて育成します。勿論ガラスの水槽に並べて腰水で管理するのも観賞性が高いので良いと思います。そのまま一週間程度、株が落ち着くまでは強い光などは当てないようにします

クリプトコリネは熱帯の高温多湿環境で様々な植物に光を遮られた中で生育している植物です

そのためか全体的に低光量に強い種類が多いように感じています。水槽の横や何かの植物の足元にこぼれる光が当たる場所に置いておけば十分に育成できると思います(勿論しっかり照明を用意してムキムキの子を作るのも良いでしょう)

加温については我が家はほぼ無加温で真冬は室温12℃程度まで下がりますが、動きは鈍るものの今のところ枯れたりはしていません。(念の為冬は発泡シートの上にタッパーを乗せたり、なるべく高い場所に置いたり、室温が10℃を下回りそうな時はエアコンで室温を上げるなど冷えすぎない工夫をしてます)

種類によって温度に対する感受性にはばらつきがあると思いますが、適応範囲は広いと思います
もちろん温かいに越したことはないので、園芸用のヒートマットなどを使って20℃程度をキープしてやるとより良いでしょう

夏場はエアコン管理で室温27℃以上にならないように管理していますが、そのくらいの温度だと多少蒸れても溶けたりはしないです。30℃を超すと危ないような気はします

我が家の場合は一年を通してタッパーで密閉して管理できるため、害虫がほぼ発生しないのは美点だと思います

密閉環境だと基本的には乾くことはないので施肥や水やりは月に一度…もっと少ないかも…?気がついた時に薄めにやれば十分だと思いますが、生育が旺盛な春先から夏にかけてはすこし多めに、滞る秋から春までは控えめにを意識しています

ピートやソイルの栄養がかなりしっかり効くのでそこまで栄養不足を感じたことはありませんが、置き肥として安いIB化成の玉みたいなものを一粒置くとテキメンに効きます

例外的にLA便のMin‐1など根に酸素を欲しがるクリプトが何種かいるようで、その場合は積極的に水通しすることで生育を促進することができるようです


以下ダイソー5.5Lタッパーで育成している鉢物です





我が家だとこんな感じで育っています…改めて見てみるとやっぱりちょっと光が足りてなくて徒長気味かも…?


そんなわけで僕なりのクリプトコリネの鉢物について色々書いてみました



次回…があれば、日本式?ヨーロピアンスタイルについて書いてみたいと思います

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