今回はAzul Aquariumさん主催の即売会で入手したピクタムの育成記録です
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Aglaonema pictum"ちゃんぷーる" from Sumatera selatan【AZ0823-5otr】 |
今回は初めての現地直輸入株の育成です。失敗したり失敗したり失敗したりの繰り返しで失敗しっぱなしでしたが、三ヶ月かけてなんとか立ち直ってきました
今振り返ってみるとあの時ああしていれば…!というのが多いので、購入後の経過と介入の記録、改善点についてまとめてみたいと思います
ガサゴソ会inAKIBA
この株は今年の8月に現代日本を代表するプランツハンターの一人、Azul Aquariumの甲斐さんが行った個人即売会、ガサゴソ会in秋葉原で購入したものです
ピクタムを初めとした海外からハンターが採集してきた植物は、ハンターさんが日本国内の特定ショップに卸す場合と、ハンター自身が即売会(天下一植物会、BorderBreak、サンシャイン蘭展など)に参加/開催する場合、ネット販売(籠、ヤフオクなど)で直接販売する場合など3つくらいの大きなルートがあり、即売会はアクアリウムバスや天下一植物会などの大規模なものから、ガサゴソ会のように個人で即売会を開いて販売する小規模のものまでいくつかパターンがあるようです
個人即売会は、ハコが小さい分参加人数が絞られていて、じっくり植物を見られる点、ハンター本人から買うことで間違いなくホンモノの採集物を購入出来る点、現地採集時の様子や育成のヒントなどを直接聞ける点などのメリットがあります
デメリットは……お金を使いすぎてしまうことでしょうか(笑
そんなわけでガサゴソ会に参加すべく秋葉原に行きました。集合時間が指定されているのですが1時間前くらいに行って周辺を散策して30分前に集合場所に行ってみると、すでに数人並んでいました
個人の即売会に参加するのは初めてですが、とりあえず挨拶して談笑しながら甲斐さんの到着を待ちました
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雑居ビルに集まるジメジメメンズ |
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会議室に運び込まれる植物達 |
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今回僕がメインで狙ったピクタムちゃん達 |
甲斐さんの即売会では最初にくじを引いて購入順を決め、二周目は最後尾から購入したい株を選ぶといった感じで、参加者全員にある程度平等にチャンスがある方法で購入するスタイルでした
今回はピクタム一点狙いで来たのですが、いざ実物を見てみると素敵な植物が多くてついつい目移りしてしまいました
皆さん真剣に悩みながらも和気あいあいと草を選んでいきました。今回は前半後半と別れていて各回一人3株までということだったので3株選びました
いっそ全部買い占められるくらいお金があったらいいのに…
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今回購入した株 |
結局、悩みに悩んで、ブレにブレて、ピクタムとホマロメナ、ボルビティスを購入しました
なおAZさんからは事前に現地採集モノのピクタムは最終的に付いている葉の2~3枚は落ちるくらいのつもりでいてくださいと注意喚起のアナウンスがありました
この時の僕は”そうは言っても案外大丈夫なんでしょう?”とたかを括っていました
愚かですね(笑
AZさんやTBさんのブログにはピクタムの導入時の養生についても色々書かれているので、是非一度目を通しておくと良いと思います
ちゃんぷーるって何?
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購入株の正規タグ |
今回購入した株のタグはAglaonema pictum “ちゃんぷーる“ from Sumatera selatan【AZ0823-5otr】です
学名Aglaonema pictum、“ちゃんぷーる”と名付けられた、スマトラ南部で23年8月に現地ハンターが採取したものといった意味です
“ちゃんぷーる“はAZ便では“ニルヴァーシュ"や"エウレカ"などの名前を与えられた特別な個体群(ネームド)とは違う、銘の付いていない個体群(非ネームド)に与えられる総称です(LA便だと”しるばーらいん”などハンターさんによって名前が異なります)
要するにネームドにはなれなかった何者でもない株なわけですが、何者でもないから何者かになる可能性もある…かもしれない夢のある株ということですね
しかも、この株の場合更に最後にotr(otherの略)と付いているので、甲斐さんが直接採ってきた株ではなく、現地のハンターから買い付けた株という、更に出所不明のロマン株です
甲斐さんはハンターとして現地で採取した株はほぼ必ず採集場所の写真を撮り、その記録コードと共にblogやSNSに残しているため、タグについているコードを検索すればその植物の現地での様子にアクセスできる”間違いなく甲斐さんが現地採集をした本物”であることにこだわっている方なので、otrは相対的に価値が落ちる感じです
(要するにAZのタグは付いてこそいても現地からの輸入便を買うのと変わらないよということ。一応甲斐さんの目利きを通してはいるけれど)
それでも可能性を感じたんだからそれでいいじゃないか
養生篇
葉の表現が好みで、なるべく発根が多い根の立派な株を選んで購入してきました
家に帰って早速養生をしようと袋を開けると…
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ポキっとな! |
ギャーッ!いきなり立派な根がポキっと折れました!
おいおいおいおい大丈夫かいな…と思いつつ養生のための作業を進めると株を動かす度に根がポロリポロリと落ちて行き、最終的には太い根が1本のみ残るだけ…
震える手で根一本の根茎を用土に植え付けました
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見るからにぐったりしています… |
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大丈夫か?? |
甲斐さんが口を酸っぱくして、現地採集株は(病気や害虫対策で)ひとまず2週間は隔離してくださいとおっしゃっていたので、それに従って専用ケース(ダイソー)に隔離して養生を開始しました
気温26℃、湿度85%程度で養生開始
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3日後 |
鉢より下に曲がっておる…
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5日後 |
気持ち起きてきた
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一週間後 |
甲斐さん曰く養生から3日〜一週間でスックと起き上がって、大地に立つ!という感じになれば大丈夫!とのことでしたが…ダメだこりゃ…
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2週間後… |
二週間かかってなんとか頭をもたげて来ましたが、なんとも疲労困憊な感じ…。先端についいていた新芽も黒くなってきたので取り除きました
ピクタム界隈では水切れなど何らかの不調で葉が垂れた状態を“ペンギン“と呼びますが、まさにペンギンが羽根を閉じたような状態で、全身で疲労感を訴えかけているようです
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最初の犠牲者 |
“下葉3枚は落ちる“との予言通り、一番下の葉が黄変しました
健康な株であれば、徐々に葉の栄養を株に移してから葉が落ちるので放置しますが、不調での黄変はそのまま腐ってしまい病巣になることがあるので早めに除去しました
どうしても気になって、用土をひっくり返して根腐れしていないか確認したところ、根は植えた時から何も変化せず、新しい根が生える気配もありませんでした
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うーん…どうもうまくいきません |
ここで今更ながら趣味家のへこみんさんに育成相談をしてみると、“動かない根茎部分には見切りをつけて地上部に取り木をかけたほうがいいのでは?“とのアドバイスを頂きました
なるほどなぁ…ということで思い切って一度植え替えつつ取り木をかけることに
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肥料、活力剤系色々 |
ピクタムは根だけでなく全草体から水分を吸収できるとどこかで耳にしたので、せっかくだから全体を水に沈めつつ色々元気になれそうなものを吸ってもらおう!と思い立ち、各種液肥、活力剤、微量元素系を規定量の10倍に薄めて使いました(調子を崩している時は何ごとも薄めが良いです)
入浴は1時間
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お風呂上がりは瑞々しく、気持ちしゃっきりしました |
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葉の柄は本当に魅力的だと思います |
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うーん良い…… |
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元気になってね |
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ここに取り木をかけます
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取り木
取り木とは、木の幹や枝に水苔などを巻き付けて置いておくことで発根を促し、根を出した所でカットして木を増やす方法です
ピクタムの取り木については詳しいサイトが色々あると思うので詳細はそちらに任せますが、一般園芸の取り木と特に変わりませんので園芸書を読む方が勉強になるかもしれません
これは多分産地やパッチ、株の状態や個性などが影響する気がするので一概にどのやり方が正解みたいなものはなさそうな気がしています
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後から支柱を立てて腰の曲がった茎の矯正も狙いました |
この状態で約一月待ち、恐る恐る水苔をめくってみると…まさかの変化なし!
ということで改めて水苔を巻き直してギュウギュウに縛り上げました。ついでに根本も用土から水苔に交換
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巻き直しから二週間後… |
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発根してるー! |
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発根してから水をしっかり吸い上げるように!! |
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垂れていた葉も持ち上がって来ました! |
なんと発根してから株全体に水分が回るようになったのか(いわゆる蒸散してる状態)ペンギンになった葉はスックと持ち上がってきました!
ペンギンは株が調子を直しても治らないかも…と聞いていたのですが、思ったより状態が良くなってきました!これが根のチカラか!!
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いい… |
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やはりカッコいいよキミ! |
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スクスク育て… |
一月後、取り木の水苔の中の根は徐々に伸びてきましたが、地下の芋側はまったく発根していなかったので調子の悪い芋と地上部分を分けて双方に刺激を与えてみることにしました
株分け
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切り離すことで刺激になれば… |
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カットにはカッターと消毒用のライター |
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火炎消毒は刃は痛みますが手っ取り早く重宝します |
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御開帳~ |
多分ピクタム界隈の一般的な感覚だと植え替えなど根を動かすには物足りない発根量だと思います…が、思い立ったが吉日!(せっかちなだけです
水苔を剥がす過程で根がまたポキポキと3本ほど折れました…もしかしてこの子はそういう個性なのか…??
処置前はいつもの入浴
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お芋側 |
根腐れ防止で水苔にサンソが一番を混ぜ込んでいます。効果は…分かりません。おまじないです
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切り口は腐りやすいので埋めないほうがいいそうですよ |
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大きく育ってほしい… |
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うちでは養生はビニール袋に閉じ込めて湿度管理します |
袋に入れたまま常湿のケージに置いておいて、3日ほど密閉後袋の口を開いて…という感じで湿度を管理します
シンプルですが案外いい感じですよ
2ヶ月後…
ふと記事を書いててそういえばお芋の状態はどうなってるんだろ?と抜いてみると…
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お芋腐ってた… |
先端部分が腐っていました!!多湿にしすぎたみたい…ゴメン
指で押してみて柔らかい部分は切除してベンレート水溶液で殺菌してから切断面を処理して用土に埋めてみました(いわゆるインチキスタイル)半年後くらいに芽が出てくるのを祈ります
本当は3ヶ月は放置しておくつもりだったのですが、心配になったので取り木をかけた頂芽側も確認してみると…
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いい根~♪ |
いい感じに発根してました!!
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タケノコもニョッキリ |
頂芽の成長点が潰れているので今後はこのタケノコを育てていく感じになるのかな?
成長が楽しみですね(今更ですが芋の下端を切っておけばよかったかも)
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またパッキング |
いままでは水苔管理でしたが、用土に植え替えました
そんなわけで購入から約半年の流れでした~(長すぎるわ!
今ならこうする 考え方の変化
ピクタムの養生はそれぞれの家庭やケージ、光や室温など様々な要素があるので先達の情報は参考になれど自分の家の状態を把握して自分のパターンを掴んでいくしかありません
なので育成相談をしても慎重かつ誠実な人ほど言い切るようなことはせず、ふわっとしたアドバイスをされると思います。もし周りにそういう方がいるならばその方の言う事をこそ参考にすると良いと思います
株の選び方
株の選び方についてですが、今回のように抜き苗で置いてある場合は大丈夫なのですが、鉢に植えてあるピクタムを選ぶ際は茎の太いものを選ぶと良いと思います
茎も芋の一部と考えると茎が太い株はパワーがあるので、茎の太さは養生後の立ち上がりに差が出ると思います。同じ親からの株が並んでいる際はより茎が太いものを選ぶのがベターでしょう
輸入株については最初に付いている根は最終的には全て落ちるものと考えて、根茎がしっかりしているもの、フニャフニャではないもの、かつ茎が太い見るからに健康的なモノを選ぶべきでしょう
また成長点がちゃんと残っているモノを導入すると育成がスムーズに進むと思います
養生の仕方
まずは植え付け前の入浴、ただの水(25℃程度)でもいいのですが、メネデールなどの発根促進要素のある微量栄養素を加えて2時間程たっぷりと漬けてやると思います
植え付けは今なら固く絞った水苔で植え付けると思います。理由は水苔のほうが湿度管理が簡単で通気性も高いためです
また鉢もプレステラよりも通気性の高いマジカルポットなどを使うと思います
湿度管理については後半から採用しているパッキング法でやって上手くいっています。この株については密閉する期間が長すぎたなあと思います。いまならば完全な密閉は2日から3日、以降は湿度60%くらいまで落とすと思います(それでダメそうならまた上げればいいだけ。蒸れるのが一番ダメ)
また元気な株ならば養生開始から一月もあれば発根が始まるものですが、調子を崩している株は全ての成長予測を元気な株の倍くらいで考えてどっしりと構えていれば良いと思います
僕もまだ10株程度しか扱ってないですが、経験を積まないとさじ加減が分からないので仕方ないですね……
取り木
取り木のタイミングはともかく、やり方は特に間違ってないと思うのですが、水苔の巻き加減に関してはまだまだ答えが出ません。今のところはキツく巻いたほうがうちの環境では成績がいいように思います
株分け
やり方は色々調べて今のスタイルに落ち着きました。特に問題はないと思いますが、株分け後は当然吸水量が落ちるため用土は乾かし気味で管理したほうが良さそうです
まとめて
2株目からいきなり現地直輸入株に手を出したのは我ながらかなりの冒険となりました。株が頑丈だったおかげでロストせずにすみましたが、この株にはかなり色々な勉強をさせて頂きました…
まだこの株の本来の表現が見られていないので、今後の仕上がりを楽しみにしていきたいと思います
初心者に親切丁寧にアドバイスを下さったAZ甲斐さん、へこみんさん、東京ビバリウムさんに感謝を
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