今回も”お昼下がりの素敵な水草投稿”から6~10回目までの水草を再掲しつつ、語ったりソースを付けたりしてみようと思います
しがない水草オタクの水槽の儚い水草達を楽しんでいただければ幸いです
マナウスナローリーフはトニナsp.の中でも細葉系にカテゴライズされるものだが、数あるトニナの中でも特に普通の有茎草っぽい?雰囲気のあるトニナである
細葉系のトニナには、他にスレンダーリーフ、ウェーブリーフ、マディラ、ラーゴグランデなどがあるが、マナウスナローは節間が詰まりすぎずに葉先が若干暴れるため特に自然な雰囲気を持つ
育成は南米水草おなじみのPH/KH低めの環境なら特に難しいことはなく、むしろ容易な方であろう(トニナspには育成難種とそうでないものがあり、ウアウペス産などは特に難種で知られる)
容易とはいえ一応トニナなのでソイルやカチオン樹脂の機能低下などでKHが上がると葉先がいじけやすい。KHを日常的に測定して管理するべきだろう(オススメはしないが指標として使うこともできる
トニナspを始めとする過去に育成難種とされた南米有茎草の多くは、特にアンモニア態窒素を好む植物が多く、シャキッとしないと感じる時はアンモニア態窒素が含まれる底床肥料(アクアフローラなど)を入れると元気に育つことが多い(大概の水草はアンモニア態窒素が好きなものだが)
以下こぼれ話
南米水草ブームの火付け役になった南米のホシクサ、トニナsp.はベレン産を皮切りに様々なロカリティのものが日本に輸入された
ブーム前夜、トニナsp.ベレン産は希少かつ超育成難種として知られ、1本1万円前後で取引され、数多のマニアが挑んでは頂芽が白化し、成長が止まり、エビの餌食になり…と惨敗を繰り返した
(かくいう僕も1本5千円近いトニナを一晩でエビに丸裸にされたものです)
その後ソフナイザーを使うと上手く育つとか、当時の新商品であったニッソーのアクアプラントサンドを使うといじけないといった情報が散見されるようになり、最終的にADAのアクアソイルアマゾニアの登場によって万人が簡単に育てられる水草になった(アマゾニアはそれだけ革新的な存在だった)
(トニナsp.ベレン産はアクアズームの三浦達雄氏が育成法を確立したような記憶があるけどアクアライフに載っていたんだっけな…)
→アクアライフ96年2月号に掲載されていたという情報を頂きました。ありがとうございます
HPにもあるが、当時トニナは海外でも育成が難しい水草として知られていて、三浦氏の記事はドイツでも紹介されるほど注目を集めた(今や隔世の感がある
ブームの真っ最中は毎月のように新産地のトニナが輸入され、ショップ側も区別が付かなくなるくらい様々な産地のトニナが溢れていた。まさに狂騒であったと思う
トニナspの育成が容易になったおかげで、産地毎の特長によって大まかに分けられるようになった
ベレン産のようにしっかりカールの入るもの、スレンダーリーフ/マディラ産のように細葉でカールの緩い、またはカールしないもの、ジャイアントトニナ/ヴァウペス産のように巨大化するもの、サンガブリエル産のように底床を這うように成長するもの、トニナsp.フルビアティリスとして紹介され、後にスターレンジとして分けられたものなどなど
(スターレンジはその後更に新産地が開拓されてロカリティが追加され、細分化されていった)
現在では残っている種も少なくなってきたが、当時のレヨンベールアクアのサイトにも書かれている通り、ロカリティ違いのものは可能な限り混ざらないようにしっかりと分けて維持したいものである
7:Vesicularia cf. reticulata
フクロハイゴケの仲間、流通名:サムライモス
三角形の葉を密に展開する国産のモスの一種
同じような形の葉を展開する南米ウィローモスと比べるとより小さく密に葉を茂らせるため、雰囲気のある茂みを作ることができる
南米ウィローモスより少し足が遅いのでレイアウト維持に向いていると思っている
我が家の場合は低PH/KHの水質で特に難しいことを言わずに育つが、育成環境によってはあまり横に広がらない事があるそうだ
僕がこのモスを知ったのは、クリスタルレッドビーシュリンプの生みの親である鈴木氏のファーム、シュリンプ栽培センターでエビのシェルターとして様々なモスを販売しており、そのうちの一つがこのサムライモスであった
エビ屋さんでエビを買わずに水草(モスやクリプト、ブセなど)を買うのは現在も変わらずにやっているのだが、我ながらなんとも不義理な客である
最初シュリンプ栽培センターで購入し育成してみてその綺麗さは印象に残っていて、後に絶やしてしまったが、昨年同センター産のものを再入手する機会があり育てているが感触的には同じものだと思う
こぼれ話
南米ウィローモスと比較して…と書いたが、”南米ウィローモスはデビュー時と現在出回っているものは別物”だと古いアクアリストが口にするのを聞いたことはないだろうか?
かくいう僕もその一人なのだが、南米ウィローモス自体そもそもが南米産ではなく東南アジア産であるとされていたり、出自からして謎のモスである
僕は近所の熱帯魚店に初入荷した際(95年くらい?)に、あまりにも異質で美しいモスに一目惚れして、その草を持って近所の別の熱帯魚店に売り込みに行き、追加で買ってきてとおつかいを頼まれたりしたので記憶によく残っている
当時はプリンカップで1個500円だったかと思う(消費税は3%だった)
当時の南米ウィローモスは現在出回っているモノと比べるとより小型で、整然と茂るが高光量・高栄養下では茶色い仮根が出やすく、一般的なレイアウト水槽よりも陰性水草水槽に向いた植物だった。また全体的にはイガイガ、カサカサするような独特な手触りがあった
現在流通しているものは仮根は控えめながら草体全体がより長大になり成長も早く、三角葉を展開するものの繊細さに欠ける印象である。触った感じもパリッとしていて違う水草だなぁと思う
8:Nymphaea sp.'Pantanal'
流通名:パンタナルチェーンロータス
底床内に地下茎を走らせて茂みを作る小型ニムファ
入荷した頃は明確にサンタレンドワーフニムファと分けて扱われていたが、現在は流通レベルで混同されている(嘆かわしいことだ)
実際に並べてみると違いが分かるが、混植したらまず区別は付かないだろう
見た目上の違いとしてはパンタナルチェーンロータスは全体的なシルエットが丸みがあり、サンタレンドワーフニムファは全体的には楕円型でより鋭角的である
耳状突起の形状も特長があり、パンタナルのほうが開き気味、サンタレンの方が閉じ気味である
葉への斑の入り方は環境による影響が大きいので一概には言えないが、パンタナルは斑が多め、サンタレンはよりまばらな印象になる
またドワーフニムファの仲間としてタパジョスドワーフニムファが知られるが、タパジョスは全体が三角形で黄緑の葉を出しやすく、赤茶の斑が強く入るので明確に違いがある
左からパンタナルチェーンロータス・サンタレンドワーフニムファ・タパジョスドワーフニムファグリーン |
混ざったらまず区別が付かないので同じ水槽に入れないか、混ざらないように工夫をするべきだろう
こういったドワーフニムファの類は地下茎を想像以上に深く張って流されないように土台を固めつつ、横にジワジワと広がり面を葉で埋め尽くしていく性質があり、レイアウト的には使いやすい
これは人工の水辺でよく問題になる逸出した園芸睡蓮の性質と同じで、面を作って他の草への日光を遮り、周囲の草を枯らせながら自分の生息範囲を広げる侵略的な生存戦略であり、小さくてもしっかり睡蓮の仲間なんだなぁと感心させられる
9:Tonina sp. 'Lago Grande'
流通名:トニナsp.ラーゴグランデ
前述のマナウスナローと同じく細葉系のトニナ。
LagoGrandeという地名はブラジル東部セアラー州にあり同名の広大なラグーンがリゾートとして知られるが、そこの採集物なのかは謎
マナウスナローと同様にまばらな輪生具合と緩~くカールする葉が特徴
ベレンと比べると全体的に厚ぼったすぎない印象を持つのでトニナ類の中でもレイアウト向きだと思う
PH/KH低めの南米水草環境なら丈夫で、個人的にはトニナの中でも育成が容易な種類だと思っている
昔はヤマトヌマエビの食害に悩んだものだが現状なぜか食害されにくい…単にエビが餌付いているだけかもしれない
10:Eriocaulon sp. from Goias
流通名:ゴイアススタープランツ
ブラジルゴイアス州産のホシクサの一種
南米産ホシクサの中でも特に強健で大型化する種。ロゼット型で涼やかな色のテープ状の葉を茂らせる様がとても美しい
成長は緩やかだが大きいものは株張りで直径20cmほどになる。しっかり土地を確保して成長を見守るのが楽しい草だと思う
株元から子株を吹いてジワジワと大きくなっていくので、増やしたい場合は適宜子株を株分けしていく
同様に株張りの大きいロゼット型のホシクサにはホシクサsp.マットグロッソがあるが、マットグロッソの方がより繊細でシャープ、ウニというよりガンガゼ的な茂みになる
マットグロッソの方がゴイアススターよりは繊細であり育成難易度が若干高い
他のホシクサ同様、植え込む底床は新品よりは多少こなれているものの方が調子を崩しにくい(経験則でそうだと言い切れるが、肝心のメカニズムは未だによく分かっていない)
ゴイアススターは紹介された当初は育成難種とされ価格も非常に高価な水草であった
現在では低PH/KHの南米水草環境以外に、KHが高めの砂礫の環境でも(さすがにCO2は要るが)普通に育つことが知られ、環境適応幅が広い強健な水草であることが分かっている
とにかく美しい、他にない見た目を持つ水草であるため、もっともてはやされても良さそうなものだと思う
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